最新記事

中国

中国輸出管理法――日本がレアアース規制対象となる可能性は低い

2020年12月4日(金)19時52分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

輸出用のアアースを含んだ土を運搬する労働者(2010年10月31日、江西省連雲港市) REUTERS

輸出管理法がレアアース規制を含むのか、その場合日本が対象国となり得るのか否かに関して日本企業の不安が大きい。しかし「環球時報」情報と同法条文を見る限り、対象国は選別され日本は対象外となる可能性が高い。

「環球時報」英文情報を読み解く

今年11月26日付の中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」(英語版)はConcerns about export restrictions drive up rare-earth prices (輸出規制の懸念がレアアース価格を押し上げている)というタイトルで専門家の観点を掲載している。専門家の名は中国の商務部直轄の民間組織「中国五鉱化工輸出入商会」の元副会長だった周世倹(Zhou Shijian)だ。レアアースに関する輸出入の現場のプロである。

中国政府としては明言しにくいメッセージを、こういった政府系ではあるものの民間組織のプロに発信させるというのは、環球時報の常套手段である。しかも英語でのみ発信されているというのも心憎く、「いいですか、アメリカさん。よく読みなさいよ」というニュアンスを醸し出している。

彼は環球時報の取材に対して以下のように語っている。

――日本、アメリカおよびヨーロッパ諸国は、高度な製造業にレアアースを必要としているため、中国から大量のレアアースを購入している。だから新しい規制(輸出管理法)が導入され後、中国からのレアアースの購入が非常に困難になるのではないかと恐れている。しかし日本やヨーロッパの一部の国が、今後は中国産のレアアースを購入し続けることに関してあまり心配する必要はないだろう。なぜなら中国は基本的に、ファーウェイ(Huawei、華為)をターゲットとしたアメリカのチップ禁止への報復として、レアアースを「報復の道具」として使用する可能性を考えているからだ。(引用ここまで)

要するに輸出管理法の規制対象としてレアアースを使用する可能性はあるが、それはあくまでもアメリカに対する対抗策であって、日本がアメリカと肩を並べて「ファーウェイ制裁」をしてくるのでなければ、「日本は大丈夫ですよ。レアアース規制の対象国にはなりませんよ」と言っているわけである。

これを逆から読めば、「日本の皆さん、いいですね?分かりましたか?あなたがファーウェイ制裁をするならば、あなたの国もレアアースの規制対象になるんですよ」というメッセージを日本に発し、日本を牽制しているということにもなる。

輸出管理法の規制は「国・地域ごとによって異なる」と条文に明記

この環球時報におけるメッセージを裏付ける条文をご紹介しよう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中