最新記事

メディア

韓国メディアはリストラの時代? ニュース番組にAIアナ続々登場へ

2020年12月11日(金)20時15分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

AIアナでリードする中国はロシアに派遣まで

実は、報道分野に関しては、すでにAIが導入されている。2016年ごろから、国民日報、毎日経済新聞、ソウル経済新聞、韓国経済新聞などの新聞社では、データを入力すると、株式市場や不動産、天気予報などの原稿を自動で書いてくれるAI記者が活躍中だ。

また、今年4月からは、聯合ニュースが天気予報とPM2.5などのデータを把握し、自ら記事を書くAI記者を採用している。近い将来、ニュースは記事の作成もそれを読むアナウンサーも、人間に代わってAIがその役割を担う日が来るのは確実だ。

今回、韓国で史上初となるAIアナウンサーのTVデビューが発表されたが、世界初のAIアナウンサーは誰だかご存じだろうか? 実は2年も前に中国で登場している。

中国国営放送である新華社通信が、2018年11月中国で開かれた世界インターネット大会にてAIアナウンサーを発表し注目を集めた。こちらは、男性アナウンサーで、キム・ジュハさん同様、新華社通信に勤める実在のアナウンサーをコピーして作られている。

その後、昨年3月に新小萌さんという女性アナウンサーが正式TVデビューした。さらに、英語を得意とする男性AIアナウンサーも登場し、6月には、リサというロシア人のAIアナウンサーも発表している。新華社通信の発表によると、リサは中露外交70周年を記念して共同開発されたAIアナウンサーであるという。

日本にもAIアナはいるけれど

もちろん、日本でも数人のAIアナウンサーたちが活躍している。有名なところでは2年前NHKの報道番組「ニュースチェック11」にて登場した「ニュースのヨミ子」さんだ。これは本物のアナウンサーをモデルにした中国や韓国とは異なり、かなりキャラクター化されている。それもそのはず、ヨミ子さんの外見を手掛けたのは、一世風靡したキャラクター「コップのフチ子さん」を生み出したタナカカツキが担当したそうだ。ヨミ子さんは、見た目もフチ子さんとよく似ている。

「ニュースチェック11」が去年放送最終回を迎え、「ニュースのヨミ子」さんは今、「ニュース シブ5時」という番組にて、その週のニュースランキングを紹介するコーナーを担当している。

ほかにも、今年2月にテレビ朝日が発表した「花里ゆいな」さん。AIベンチャーのSpecteeが開発した音声AIアナウンサー「荒木ゆい」さんなどが活躍しているが、どちらも外見はアニメ調の画像で、韓国や中国のように実際に人間に代わってニュース番組に出演することは想定していないようだ。

毎年「AIに仕事を奪われ、無くなる職業」ランキングなど発表されている。一説によると10年後には約半分の職業が人間の手を離れ、AIが代わって働いてくれるようになるそうだ。そんなSF映画のような世界、まだまだ先の話だろうと思っていたが、実際中国と韓国ではすでにAIが表舞台の一端を担うようになってしまった。

たしかに、AIアナウンサーを雇用すると時間も費用も節約でき、その分より良い番組作りに生かせるかもしれない。それでもなお、AIより生身の人間アナウンサーを使うメリットはどこにあるだろうか。そして、今の自分の職業は、AIよりも人間でなくてはならない必然性はあるのだろうか? 改めて考えさせられる事例である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏、第3政党始動計画にブレーキ=WSJ

ワールド

米大豆農家、中国との購入契約要請 トランプ氏に書簡

ワールド

韓国は「二重人格」と北朝鮮の金与正氏、米韓軍事演習

ワールド

トランプ政権、ワシントン検事局に逮捕者のより積極的
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 6
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 10
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 7
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 10
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中