最新記事

感染症

中国メディア「コロナ起源は輸入冷凍食品」 西側は反論

2020年11月29日(日)11時40分

新型コロナウイルスの感染者が世界的に急増している中で、中国は国営メディアを使って「コロナの起源は中国」との見方を否定する情報の拡散を続けている。北京のスーパーで11日撮影(2020年 ロイター/Thomas Peter)

新型コロナウイルスの感染者が世界的に急増している中で、中国は国営メディアを使って「コロナの起源は中国」との見方を否定する情報の拡散を続けている。ウイルスは昨年終盤に武漢の海鮮市場で確認されたが、それより前に海外に存在していたという主張だ。

これらのメディアは、ウイルスが輸入冷凍食品に付着していたと指摘。国内の科学論文なども、従来考えられていたよりも早く欧州でウイルスが出現していたと主張し、これを中国発でコロナが広がったとは言えない可能性の証拠としている。

25日には中国共産党機関紙の人民日報が、フェイスブックに「#新型コロナ感染症の始まりは武漢ではなかった。輸入された冷凍食品とその包装部分に由来しているのではないか」とする専門家の見解を投稿した。


世界保健機関(WHO)は、食品や包装のどちらもコロナの感染経路だとは見られていないとの見解を示している。それでも中国は輸入冷凍食品にリスクがあると唱えて検査態勢を強化し、その結果、ウイルスが見つかったと何度も発表して輸入品の受け入れを拒否。輸出した国が異議を申し立てる事態になっている。

人民日報系のタブロイド紙、環球時報も、新型コロナ感染症は中国外が起源だとする見方を積極的に広めている。

かつて中国疾病対策センターで疫病分析部門トップだったZeng Guang氏は、24日の環球時報で「いつ、どこでウイルスの拡散が始まったのか。ウイルスの追跡で全て解明できるわけではないが、武漢で検出される以前に、複数の場所で同時に存在していた可能性は極めて大きい」と主張。

その前週には、武漢で最初に見つかったことはむしろ、中国の感染症予防体制の強固さを証明するもので、2002─03年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行への対応で培われたとも主張していた。

根拠は薄弱

新型コロナウイルスの起源を巡って、世の中にはさまざまな観測や陰謀論があふれる。中国が初期段階で情報流出を抑圧し、海外の専門家による調査も拒んだことが、これを助長している。3月には中国外務省の報道官が、米軍によって武漢にウイルスが持ち込まれたと示唆する場面もあった。

王毅国務委員兼外相も、ウイルスの起源が中国かどうかは不確かだと言い続けている。中国外務省は、ウイルスの起源は科学の分野に属する問題だと述べるばかりで、中国起源を指摘する米国やオーストラリアなどを激しく非難している。

Zeng氏や国営メディアは中国が起源とみなされない根拠として、イタリア国立がん研究所が公表した論文を挙げる。この論文によると、同研究所が昨年10月にがん患者から採取していたサンプルから新型コロナの抗体が見つかったという。

バルセロナの下水で昨年3月に採取していたサンプルから、新型コロナウイルスが検出されたとする論文も今年、別に発表されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米テキサス州、鎮痛剤「タイレノール」製造2社提訴 

ワールド

米中首脳、フェンタニル規制条件に関税引き下げ協議へ

ビジネス

ユナイテッドヘルス、25年利益見通し引き上げ 成長

ビジネス

米エヌビディア、ノキアに10億ドル投資 AIネット
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持と認知症リスク低下の可能性、英研究
  • 4
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 5
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 6
    「何これ?...」家の天井から生えてきた「奇妙な塊」…
  • 7
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 8
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理…
  • 9
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中