最新記事

ブレグジット

コロナに感染でブレグジット交渉中断、あおりを受けてフィッシュ&チップスが食卓から消える?

2020年11月26日(木)12時40分
松丸さとみ

英国へのタラの供給を止めるとEU側は伝えている...... piola666 -iStock

<ブレグジット移行期間終了まであと数週間と迫ったが、英国とEUの間にはいまだに貿易協定が結ばれていない。>

タイムリミット迫る貿易交渉、コロナで中断

英国は今年1月に欧州連合(EU)から離脱し、移行期間も来月一杯で終了となる。しかしこのままでは英国の国民食ともいえるフィッシュ&チップスが食卓から消える可能性がある、とフィッシュ&チップスの業界団体NFFFは警告している。

移行期間終了まであと数週間と迫ったが、英国とEUの間にはいまだに貿易協定が結ばれていない。両者はこれまで、離脱後も関税がかからない自由貿易協定(FTA)の締結に向けて詳細を話し合ってきたが、お互いの要求を譲らずに暗礁に乗り上げている状態だ。

貿易交渉が遅々として進まない理由の一つに、漁業権がある。現在はEUの共通漁業政策により、海岸から12海里以上離れていれば、欧州の漁船は英国の海域へ無制限に入ることができる。英BBCによると現在は、英国海域の漁獲量のうち60%が外国船によって水揚げされている。しかし英国は、ブレグジット後には英国の排他的経済水域内での漁獲量にある程度の規制を設けたい考えだ。

topographic_map-en.svg.jpeg

イギリスの排他的経済水域wikimedia

タイムリミットが近づく中、AP通信によると、11月19日にEU側の交渉団の1人が新型コロナウイルス感染症の検査で陽性となったために、交渉が一時中断されることになった。英国の首相官邸がAP通信に話したところによると、リモートでの交渉は続けるが、直接顔を合わせての話し合いがいつ再開できるかは不明のようだ。

英国民食を救うために立ち上がったグリーンランド

このままいけば、FTAを締結できずに移行期間が終了となる可能性も考えられる。万が一そうなった場合、英国とEUは世界貿易機関が定めた基本的な貿易協定にのっとって取り引きを行うことになる。つまり、これまで英国がEUの一員として受けてきた恩恵はすべて失われる。

さらに英エクスプレス紙によると、英国海域での漁獲が許可されないのであれば、英国へのタラの供給を止めるとEU側は脅しているという。フィッシュ&チップスでもっともよく使われる魚だ。また、年内に貿易協定が締結できなかった場合は、魚介類に巨額の関税をかける意向を示しているという。

こうした状況の中、救世主となりそうなのがグリーンランドだ。グリーンランドはEU加盟国であるデンマーク領ではあるものの、独自の自治を有しており、住民投票の結果、1985年にEUの前身である当時の欧州共同体(EC)から離脱した。その後、ECとFTAを締結している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中