最新記事

2020米大統領選

アメリカ大統領選、当日の「誤報リスク」 TV各局は当確の重圧

2020年10月19日(月)10時13分

ウォルト・ディズニー傘下のABCニュースと、バイアコムCBS系列のCBSニュースには、外国勢力の選挙干渉や州ごとに異なる集計方法といった話題に密着する専門部門がある。CBSは「激戦州追跡」と名付けた手法を用い、投票結果や投票率統計、米国勢調査局統計、過去の投票パターンを組み合わせていく。

NBCニュースはコムキャスト傘下だが、専門の「投票ウオッチ」チームの規模を2倍にした。総勢24人で、投票権や、誤情報の選挙活動といった問題に詳しい特派員やリポーター、プロデューサーで構成する。チームはここ1年、フロリダやミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニア、アリゾナの5州で指標的な郡を1カ所ずつ選び出し、有権者の感じ方を報じてきた。

今回は大手テレビ局が異なる情報提供元からデータを入手する初めての大統領選となる。当日夜の結果の見通し状況が局によって分かれる可能性も大きい。

フォックスは2018年からAP通信と提携し、従来型の対面出口調査をオンラインと電話の調査に切り替えている。期日前投票と選挙当日の投票者の双方の動向を把握する狙いだ。調査結果はAPが集計するリアルタイムの結果と組み合わせ、開票予測の支援に用いる。

フォックスとAPは、3大ネットとAT&T傘下CNNなどが参加する業界連合「ナショナル・エレクション・プール」(NEP)を脱退している。NEPは各選挙区から上がってくる出口調査と開票結果を調査会社エジソン・リサーチに依存する。ロイターも今年の大統領選挙データはNEPから配信を受ける協定を結んでいる。

2016年以降、各局は各州の事前調査では性別や年齢だけでなく、学歴の違いにも比重を置く調整方法の恩恵を受けていそうだ。同年の大統領選では、トランプ氏ないし民主党候補ヒラリー・クリントン氏への支持動向で学歴による特徴が大きく出た。「大卒でない白人」の票がトランプ氏に多く流れたことが浮き彫りになったのだ。

各局の幹部らによると、今回の大統領選は「遅くても確実に」が合言葉だ。

ABCのジェームズ・ゴールドストン社長は各州の開票結果見通しについて、「確信できる所に達するには、より複雑でより長いプロセスが必要になる。視聴者に対しては情勢について透明性を確保する必要がある」と語った。

完全に予測不能

2000年大統領選のフロリダ州開票はブッシュ氏勝利があまりに僅差だったため、再集計に持ち込まれた。政治的な闘争と法廷闘争が1カ月以上続いたあげく、連邦最高裁が5対4の判断で再集計を停止させた。この最高裁決定はさらに国民の分断を呼び、一部の民主党関係者は当時のいきさつに今なお怒りを禁じ得ない。

しかし、そうした当時の出来事も今回と比べればおとなしく見えるかもしれない。党派的分断はもっとひどくなる一方だからだ。新型コロナウイルス禍で投票所での対面投票に警戒する人が増え、期日前投票は過去最多を記録している。そうした集計には何週間もかかるかもしれない。世論調査ではバイデン氏がリードしている状態だが、一部の政治専門家によれば、選挙当夜はトランプ氏が優勢になり、期日前投票や郵便投票がすべて集計されてはじめて、バイデン氏の勝利が浮上する可能性もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EUの「ドローンの壁」構想、欧州全域に拡大へ=関係

ビジネス

ロシアの石油輸出収入、9月も減少 無人機攻撃で処理

ワールド

イスラエル軍がガザで発砲、少なくとも6人死亡

ビジネス

日銀、ETFの売却開始へ信託銀を公募 11月に入札
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 8
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 9
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 10
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中