最新記事

太陽光発電

オーストラリアで太陽光発電し、シンガポールに送電するプロジェクトが進行中

2020年10月23日(金)16時20分
松岡由希子

オーストラリアに建設される世界最大の太陽光発電所のイメージ図(Sun cable)

<オーストラリアに建設される世界最大の太陽光発電所で発電した電力を東南アジア地域に供給するという壮大なプロジェクト「オーストラリア-アセアンパワーリンク」が、着々と進行している......>

豪州に建設される世界最大の太陽光発電所で発電した電力を世界最大のバッテリーに貯蔵し、世界最長の海底電力ケーブルを通じて東南アジア地域にこれを供給するという壮大なプロジェクト「オーストラリア-アセアンパワーリンク(AAPL)」が、着々と進行している。

世界最大1万2000ヘクタールの太陽光発電所

投資額が220億豪ドル(約1兆6400億円)にのぼるこのプロジェクトでは、豪州北部ノーザンテリトリー(NT)のダーウィンとアリススプリングスとのほぼ中間に位置する「ニューキャッスル・ウォーターズ」に、世界最大となる1万2000ヘクタールの10ギガワット(GW)の太陽光発電所を建設。雨季の影響を受けづらく、太陽光発電に適したエリアであることに加え、鉄道輸送をはじめ、既存の物流インフラを活用しやすいことなどから、この地が選ばれた。

「ニューキャッスル・ウォーターズ」で発電した電力は750キロ北のダーウィンに設置される世界最大の30ギガワット時(GWh)の電力貯蔵施設に送られた後、ダーウィンとシンガポールを結ぶ3711キロメートルの高圧直流(HVDC)海底送電ケーブルを通じて、シンガポールに供給される。これによってシンガポールの電力需要の約20%がまかなわれ、豪州は一連の電力輸出で年間20億豪ドル(約1490億円)を得る見込みだ。

010-solar-farm-2.png

オーストラリアからシンガポールまで送電ケーブルを結ぶ

このプロジェクトを牽引しているのは、豪シドニー郊外のピアモントを拠点とするスタートアップ企業「サン・ケーブル」だ。2019年11月には、豪州の著名な実業家である鉄鉱石メーカー「フォーテスキュー・メタルズ・グループ」の前CEO(最高経営責任者)アンドリュー・フォレスト氏や、ソフトウェア開発企業「アトラシアン」の共同創業者マイク・キャノンブルックス氏がこれに出資。豪州政府も2020年7月にこのプロジェクトを「主要プロジェクト」として認定し、後押ししている。

2027年までにシンガポールへの電力供給を

「サン・ケーブル」では、2027年までにシンガポールへの電力供給を開始することを目指しており、オーストラリア放送協会(ABC)によれば、2023年後半までに着工し、2026年までには「ニューキャッスル・ウォーターズ」で太陽光発電が開始される見込みだ。


World's largest solar farm could help power Singapore from NT desert | ABC News

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:アマゾン熱帯雨林は生き残れるか、「人工干

ワールド

アングル:欧州最大のギャンブル市場イタリア、税収増

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中