最新記事

2020米大統領選

コロナ禍で混乱のアメリカ大統領選 注目の「選挙監視人」とは

2020年10月11日(日)15時32分

米大統領・議会選を巡り、与党・共和党は支持者数千人を動員して、期日前投票所や郵便投票の回収箱に不正がないか見張らせようとしている。写真は9月、ノースカロライナ州ローリの選挙管理委員会で、投票用紙の発送準備をする係員(2020年 ロイター/Jonathan Drake)

11月3日の米大統領・議会選を巡り、与党・共和党は支持者数千人を動員して、期日前投票所や郵便投票の回収箱に不正がないか見張らせようとしている。これは本来、法令で定められた「選挙監視人」が果たす役割だ。

選挙監視がどのような歴史的な経緯をたどってきたか、また、新型コロナウイルスのパンデミックに伴う郵便投票の急増や、トランプ大統領が根拠なく郵便投票で不正が起きると主張していることで、選挙監視にどれだけ新たな意味合いが帯びてくるか、以下で説明する。

選挙監視とは

選挙監視人が米国の選挙制度の一部になった起源は、18世紀にさかのぼる。監視活動は州法や地元自治体の規則に基づいて行われ、与野党双方から選出された人々が投票や、さらには相互の監視人をも見張り、円滑な選挙の進行を確保する。

州によって選挙監視人の呼び方や、与えられた役割はさまざまだ。ある地域では監視専門の「ウオッチャー」と、投票の違法性を指摘することができる「チャレンジャー」は明確に区別される。ところが、別の地域では監視と投票の異議申し立ての権限を同じ人が有する。

投票所の外で特定候補者の支持者たちが看板掲示やちらし配布などで陣営側への投票を誘おうとする際に、こうした支持者たちがどこまで近寄ってよいかを定めているところもある。

監視人の越権行為に対する不満も、頻繁に出てくる。時には監視人が、マイノリティーを差別する意図で有権者の投票資格に異を唱え、そうした行為を阻止するための訴訟が起こされたケースもある。

1999年のミシガン州ハムトラムク市の選挙では、「より良きハムトラムクのための市民」と称する団体から送り出されたチャレンジャーが、「暗い肌の色と明らかなアラビア風の氏名」を持った40人のアラブ系米国人の投票資格に疑義を呈し、彼らは選管当局から米国市民であると宣誓証明することを強いられた。その後、同市は司法省からの命令で選挙従事者に対する研修を行うことを受け入れ、2003年まで市の選挙を監督する連邦政府の担当者が任命された。

1981年には、ニュージャージー州の選挙で共和党側が主にマイノリティーが居住する地域で投票所の外に武装した人員を配置する不穏な行為があり、以後、同党は投票の安全確保のために行き過ぎた措置を講じないことに同意した。ただ、この取り決めは、民主党からの更新の要請を連邦裁判所が却下したため、2018年に失効しており、今回の選挙で共和党は再び制約なしに投票所の「治安維持活動」が可能となる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

南ア失業率、第2四半期は33.2% 2四半期連続上

ビジネス

米中小企業景況感、7月は上昇 不透明感は強まる

ワールド

メキシコ、麻薬カルテル構成員をさらに米国へ移送 ト

ビジネス

日経平均が連日の史上最高値、CPI受け9月米利下げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が教える「長女症候群」からの抜け出し方
  • 2
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...気になる1位は?
  • 3
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段の前に立つ女性が取った「驚きの行動」にSNSでは称賛の嵐
  • 4
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 5
    【徹底解説】エプスタイン事件とは何なのか?...トラ…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 8
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 9
    トランプ「首都に州兵を投入する!」...ワシントンD.…
  • 10
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 1
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 2
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの母子に遭遇したハイカーが見せた「完璧な対応」映像にネット騒然
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 5
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中