最新記事

宇宙探査

月面の宇宙放射線は地表の200倍、月面滞在は2ヶ月が限度か?

2020年10月6日(火)18時00分
松岡由希子

「宇宙飛行士が月面に滞在できるのは約2ヶ月が限度だろう」 StockImages_AT

<中国とドイツらの研究チームは、月面で放射線の時間分解測定を初めて実施し、研究成果を発表した......>

アメリカ航空宇宙局(NASA)が「アルテミス計画」において2024年に有人月面着陸を目指すなど、各国で月探査への動きが活発となっている。宇宙飛行士にとって重大なリスクとなるのが、宇宙放射線の被爆だ。これによって、白内障やがん、中枢神経変性疾患などが引き起こされるおそれがある。

地表の200倍以上、国際宇宙ステーション内部の2.6倍

中国科学院国家空間科学中心(NSSC)と独キール大学らの国際研究チームは、2019年1月に月の裏側で月面着陸した中国の無人探査機「嫦娥4号」にキール大学が開発した線量計「LND」を搭載し、1月3日から12日と1月31日から2月10日までの間、月面で放射線の時間分解測定を初めて実施した。

一連の研究成果は、2020年9月25日、学術雑誌「サイエンス・アドバンシス」で発表されている。

宇宙飛行士が宇宙服に保護されているのと同等に保護された「LND」は、宇宙放射線がヒトに及ぼす生物学的影響を推定するべく、等価線量で放射線を測定した。

その結果、宇宙放射線の線量当量率は57.1毎時マイクロシーベルトと、地表の200倍以上にのぼった。月面の平均線量当量は1日あたり1369マイクロシーベルトで、同時期の国際宇宙ステーション(ISS)内部での線量当量に比べて2.6倍も高い。これは、国際宇宙ステーションが部分的に地球の磁気圏によって宇宙放射線から守られているためだと考えられる。

宇宙飛行士が月面に滞在できるのは約2ヶ月が限度か

研究論文の共同著者でキール大学のロバート・ウィマー=シュバイングルーバー教授は、月と地球との往復に要する約2週間の被爆量も考慮したうえで「宇宙飛行士が月面に滞在できるのは約2ヶ月が限度だろう」との見解を示している。

月には宇宙放射線を遮る磁場や大気がなく、月面の放射線場は惑星間空間と似ている。そのため、今回の研究成果は、月探査だけでなく、有人火星探査など、将来の惑星間ミッションにも役立つと期待が寄せられている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米EVルーシッド、2020年代終盤にキャッシュフロ

ワールド

米、強制労働巡り不公正貿易調査を開始 日本など60

ビジネス

世界EV販売台数、2月は前年比11%減 中国の落ち

ビジネス

国民生活への影響念頭にいかなる時も万全の対応取る=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 3
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃に支持が広がるのか
  • 4
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 5
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 6
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 7
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 8
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 9
    2万歩でも疲れない? ディズニー・ユニバで足が痛く…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中