最新記事

買収合戦

TikTokとの交渉権を得たオラクルのCEOはトランプのお友達、米中対立の命運も握る?

Oracle's Larry Ellison Is One of America's Richest Men and Trump Supporter

2020年9月15日(火)18時30分
ジェイソン・マードック

エリソンは後にフォーブス誌に対し、トランプの政治活動に対して個人的に資金提供を行ったことは一度もないと語った。「私はトランプ大統領が自分の土地を使うのを許可しただけで、資金集めの場にはいなかった。アメリカの大統領は一人だけだ。私は彼が悪人だとは思わない。彼を支持するし、彼の仕事がうまくいくよう願っている」

エリソンは2012年にハワイのラナイ島の大部分を3億ドル前後で購入。2018年にはテスラの株式を約300万株購入し、同社の取締役に就任している。

オラクルの幹部でトランプとつながりがあるのは、エリソンだけではない。現最高経営責任者のサフラ・カッツは2016年12月、トランプ次期大統領(当時)の政権移行チームに参加した。これに反発し、同社の上級幹部だったジョージ・ポリスナー(57)は辞任。ポリスナーは辞表に「私はトランプ次期大統領を支持しておらず、彼を手助けするつもりはない。彼の複数の政策は憲法違反や犯罪すれすれで、倫理的に間違っている。私は可能な限りの合法的な方法で彼に反対する」記し、この内容をリンクトインにも投稿した。

エリソンとカッツは4月、オラクル社員に、米政府によるCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の治療データ記録を支援するためのクラウドシステムを構築したことを告げた。ビジネス・インサイダーによれば、エリソンが電話でトランプと話し、クラウドシステムを無料で提供すると申し出たという。

「パートナー契約」でトランプは納得するか

本記事の執筆時点で、TikTokの買収交渉が今後どうなるのかは不明だ。米国内のTikTok反対派は、同アプリを運営する中国企業バイトダンスがアメリカの利用者に安全保障上のリスクをもたらすと主張しているが、バイトダンスの幹部は繰り返しこの指摘を否定している。

ロイターが中国国営メディアの報道を引用して伝えたところによれば、バイトダンスはTikTokの米国事業をオラクルにもマイクロソフトにも売却するつもりはないという。ある情報筋は香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙に対して、バイトダンスがTikTokの重要技術であるアルゴリズムを米国の買い手に渡すことはないだろうと語った。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、オラクルが米国内におけるバイトダンスの「信頼できる技術提携相手」となる見通しを報じており、これは事業の完全な売却とは異なるもようだ。米政府はTikTok米国事業の完全な売却を求めており、(場合によってはエリソンが援護射撃を行うことで)パートナーという形でトランプを納得させることができるかどうかは不透明だ。

マイクロソフトは13日に声明を出し、「本日バイトダンス側から、TikTokの米国事業をマイクロソフトに売却しないという通知があった。当社の買収案は国家安全保障上の利益を保護し、TikTokのユーザーにとっても良いものだったと確信している」と説明。事業の売却先に選ばれなかったことを明らかにした。

(翻訳:森美歩)

【話題の記事】
地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される
中国ステルス機2機が中印国境に到着、空中戦準備の可能性も
「中国はアメリカに勝てない」ジョセフ・ナイ教授が警告
中国からの「謎の種」、播いたら生えてきたのは......?

20200922issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月22日号(9月15日発売)は「誤解だらけの米中新冷戦」特集。「金持ち」中国との対立はソ連との冷戦とは違う。米中関係史で読み解く新冷戦の本質。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、中国製油所などに制裁 イラン産原油購入で

ワールド

金正恩氏、北朝鮮の国際的地位を強調 党創建記念式典

ワールド

台湾総統、双十節演説で「台湾ドーム」構想発表 防衛

ワールド

印ITサービスTCS、第2四半期は予想上回る増収 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 3
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 4
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 5
    50代女性の睡眠時間を奪うのは高校生の子どもの弁当…
  • 6
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 7
    史上最大級の航空ミステリー、太平洋上で消息を絶っ…
  • 8
    底知れぬエジプトの「可能性」を日本が引き出す理由─…
  • 9
    いよいよ現実のものになった、AIが人間の雇用を奪う…
  • 10
    米、ガザ戦争などの財政負担が300億ドルを突破──突出…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 10
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中