最新記事
エジプト

底知れぬエジプトの「可能性」を日本が引き出す理由──両国を結ぶ、才と優しさの物語は新章へ

2025年10月8日(水)15時00分
アルモーメン・アブドーラ(東海大学国際学部教授)
大エジプト博物館

正式開館が待たれる大エジプト博物館を訪れる人々(6月2日、ギザ) Amr Abdallah Dalsh-REUTERS

<時代を超えて新たな文明を生み出し続けてきた原動力、エジプト人が持つ二つの性質とは? そして日本の貢献とは?>

古代の記憶が再び息づこうとしている。ナイルの風がささやくように、時間の砂を超えて現れたのは、偉大なる王たちの夢の欠片だ。

カイロの西、ピラミッドを見渡す丘にそびえる大エジプト博物館。その扉が今、ゆっくりと開かれ、永遠の都が再び光を取り戻しつつある。王の黄金のマスク、神々を象った彫像、淡い砂色に焼けた石碑──それらは数千年の眠りから目覚め、人々に自らの物語を語りかけている。

一方、はるか東の島国・日本でも、ラムセス大王の足跡が静かに熱を帯びている。ラムセス大王展(豊洲のCREVIA BASE Tokyoで2026年1月4日まで開催)の展示会場に並ぶ壮麗な遺物は、ただの展示品ではない。そこには、ファラオが夢見た永遠の王国への祈りが宿っている。訪れる人々は、時空を超えて同じ光景を見つめ、かつてナイルの流れを照らした黄金の太陽を心の中に感じるのだ。

大地を越え、時を越え、古代と現代が出会う──いま、世界は再びエジプトという"記憶の王国"に耳を傾けている。

エジプト、その社会は古代から現在に至るまで進化を遂げてきた。極めて複雑な文化、文明の発展過程を歩み、古代人が築いた文明が失われた後も、時代を超えて新たな文明を生み出し続けてきた。その進化の源となっているのは、私が思うにエジプト人自身が持つ二つの性質によるだろう。

一つ目は「柔軟性」。エジプトが辿ってきた長い歴史を振り返ってみると、この国の人々は自身を取り巻くあらゆる出来事に柔軟に対応し、必死に生き続けてきた。状況に応じて「成す術」を臨機応変に変えていくのはエジプト人が得としていることであろう。

ナーセル大統領やムハンマド・アリの時代のように時には「力」を使うこともあれば、オスマントルコが支配していた時代のように嵐に直接立ち向かわず、現実的なやり方で妥協する道を選んだこともある。大きな時代のうねりの中で、エジプト人という民族はいかなる状況でも柔軟に対応することによって生き続けてきたのだ。

東京アメリカンクラブ
一夜だけ、会員制クラブの扉が開いた──東京アメリカンクラブ「バンケットショーケース」で出会う、理想のパーティー
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

今年のドル安「懸念せず」、公正価値に整合=米クリー

ワールド

パキスタン、自爆事件にアフガン関与と非難 「タリバ

ビジネス

今年のドル安「懸念せず」、公正価値に整合=米クリー

ビジネス

米ディズニー、第4四半期売上高は予想に届かず 26
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中