最新記事

2020米大統領選

米大統領選、熱気に欠けるトランプ岩盤支持層 反対派は嫌悪で投票意欲向上

2020年9月14日(月)11時36分

これまで共和党の大統領候補は、同党が高齢者や白人、キリスト教保守派、銃所有者など政治活動に熱心な有権者を取り込んできたため、投票率が低いケースで好成績を収めてきた、というのが過去の歴史だった。

もちろん、投票日が近付けば、トランプ氏の岩盤支持層がもっと活気づく可能性は大いにあるだろう。8月の調査によると、まだ態度を決めていない非大卒白人が最大で2割存在している。16年の選挙では、トランプ氏に投票した人のおよそ8人に1人は、選挙戦最後の1週間に候補者を選んだという。

思わしくない白人からの評価

米国はマイノリティーの人口増加が続いているが、依然として選挙を支配しているのは白人だ。16年時点では、白人は全人口の6割にとどまったにもかかわらず、有権者に占める割合は75%近くに上った。

だからトランプ氏にとって白人の意見は重い。実際、就任以降に同氏が力を入れてきたのは反移民政策で、白人が「逆差別」を受けているとの不満にも共感を示している。人種差別抗議デモ参加者を「悪党」と呼び、つい最近はウィスコンシン州で「黒人の命は大事」運動に加わっていた2人を射殺して訴追された白人の男を擁護するような発言もした。

ロイター/イプソス調査によると、8月時点で、非大卒白人の意識を見ると、「米国は悪い方に向かっている」が61%、「米経済が悪化方向」が53%、新型コロナウイルスのパンデミックに懸念を示したのが70%超で、トランプ氏のコロナ危機対応を評価したのは48%にとどまった。

大卒白人は、バイデン氏支持が48%でトランプ氏支持は40%。16年時点のクリントン氏支持とトランプ氏支持の差が2%ポイントしかなかったのと比べ、差は拡大している。

トランプ氏選対本部の広報担当者は、陣営側の調査をもとに、全ての激戦州でトランプ氏がバイデン氏に対し互角か優勢に戦いを進めているという結果になっていると話す。

「支持者の間にはトランプ氏に投票しようとの熱気が広がっている。実際にはごく少数の民主党員だけに好かれているバイデン氏とは違う」と強気の見方を維持している。

ただ複数のメディアや大学の調査では、ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニア、フロリダ、アリゾナなどほとんどの激戦州でバイデン氏の支持率がトランプ氏を少なくとも数ポイント上回っている。

トランプ氏は具体的な根拠なしに不正が増えると主張し、有権者に郵便投票をしないよう呼び掛けている。しかし、これは裏目に出かねない。投票率が高い方がトランプ氏には有利だというデータもあるからだ。

(Chris Kahn記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・米ウィスコンシン州、警官が黒人男性に発砲し重体 抗議活動で外出禁止令
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
・中国からの「謎の種」、播いたら生えてきたのは......?


20200915issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月15日号(9月8日発売)は「米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算」特集。勝敗を分けるポイントは何か。コロナ、BLM、浮動票......でトランプの再選確率を探る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、14日から米製品への関税10%に引き下げ 9

ワールド

米・サウジ経済協定に署名、米製武器の大規模購入も 

ワールド

ロシア、ウクライナと真剣な協議の用意=外務次官

ワールド

米政権のウィットコフ・ケロッグ特使、15日にトルコ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 3
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」にネット騒然
  • 4
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 5
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 6
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 7
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 8
    トランプは勝ったつもりでいるが...米ウ鉱物資源協定…
  • 9
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 6
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 9
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中