最新記事

2020米大統領選

トランプが「法と秩序」でバイデンを追い上げ、差は誤差の範囲に

Law and Order? Biden, Trump Both Claim They Will Keep Americans Safe

2020年9月1日(火)16時30分
エリザベス・クリスプ

米有権者の関心が暴力と人種差別に移るなか、劣勢だったトランプが支持率で挽回している Kevin Lamarque-REUTERS, Carlos Barria-REUTERS

<バイデンの良識的な主張は、自ら危機を作り出して強いリーダーを演じるトランプにかなわない?>

アメリカ各地で警察による暴力や黒人差別への抗議デモが激しさを増すなか、ドナルド・トランプ米大統領と民主党大統領候補のジョー・バイデン前副大統領がいずれも「法と秩序」の重要性を強調している。だが主張の中身は全く別物だ。

バイデンは8月31日に行った演説の中で、市民による暴動が起きたのはトランプのせいだと主張した。

「トランプは、アメリカ人を恐怖に陥れることで自分を売り込んでいる」と、バイデンはフィラデルフィアで行った演説で述べた。「彼は『法と秩序』の人間などではない。彼は(暴力の)解決策ではなく問題の一部だ」

一方トランプは、警察の暴力に端を発したデモと一部のデモ参加者による略奪や破壊行為を、バイデンや民主党指導部のせいだとする。

トランプ陣営のアドバイザーを務めるジェイソン・ミラーは記者団に対し、「バイデンはずっと隠れていたくせに、まるで何カ月も前から暴力反対を訴えていたような顔をしている」と批判。「警察組織がこぞってジョー・バイデンよりもトランプ大統領の方を支持しているのは道理だ」

トランプ支持者が民兵に

トランプ陣営は(2016年の大統領選に向けた選挙活動の時と同じように)、トランプを「法と秩序」の候補者として印象づけたい考えだ。そのため各都市や州に対して、デモの鎮圧にあたっては連邦軍の派遣も辞さないと繰り返してきた。

「ジョー・バイデンが率いるアメリカでは、アメリカ人は安全に暮らせない」とミラーは語った。

そのバイデンは、自分こそが国を団結させ、新型コロナウイルス危機と経済危機からの再建ができる大統領候補だと主張する。

「ドナルド・トランプが再選されたらアメリカの暴力が減る、と本気で信じている人などいないだろう」とバイデンは述べた。「私たちは幾つもの危機に直面している。ドナルド・トランプが大きくしている危機だ」

各地でデモが激しさを増すなか、多くの衝突が起きている。バイデンは、自警団や民兵を自称するトランプ支持者者たちが街頭でデモ参加者と衝突し、多くの場合それで死者が出ていると指摘。トランプは彼らを放任していると批判した。

「トランプは、法と秩序という言葉を口にすれば自分が強く見えると思っているのかもしれない」とバイデンは言った。「だが自分の支持者に対して、民兵として活動するのをやめるように言えないのは、彼の弱さだ」

<参考記事>トランプの岩盤支持層「白人キリスト教福音派」もトランプ離れ
<参考記事>米大統領選で民主党が掲げたのは、かつて共和党が示した理想

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍、台湾包囲の大規模演習 実弾射撃や港湾封鎖訓

ワールド

和平枠組みで15年間の米安全保障を想定、ゼレンスキ

ワールド

トルコでIS戦闘員と銃撃戦、警察官3人死亡 攻撃警

ビジネス

独経済団体、半数が26年の人員削減を予想 経済危機
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中