最新記事

育児

米で増える「保育難民」 働くママにコロナ禍の試練

2020年8月14日(金)12時03分

「ホーム・アローン」

3月末に可決されたコロナウイルス支援・救済・経済保障法(CARES)法に基づき、パンデミックのために保育サービスを利用できなくなった親は、失業給付を受ける資格を与えられた。だが、この制度の認定プロセスは州によってさまざまであり、学校の年度が終了し、一部の保育施設が人数限定で再開されるなかで、いっそう分かりにくくなっている。

労働省では、親たちが通常の夏季保育サービスに頼れるよう、指針の明確化に努めている。ニューヨーク、ミズーリ、ルイジアナなど多くの州は、虚偽申請に対する罰則を設けつつも、利用していた保育施設の閉鎖と受給継続要件の是非について、親たちが毎週、自己認定することを認めている。

乳幼児のための保育施設を見つけるのも困難だが、学齢に達した子どもを受け入れる施設はさらに乏しい。この年代向けのサマースクール企画の多くがオンライン化されてしまったことも親たちを困惑させている。

サラ・サップさんは、11歳の息子アベリーくんに旧型の携帯電話を持たせる計画を練っている。

クリーブランドの郊外ノースオルムステッドで暮らすサップさん(37歳)にとって、気掛かりなのは息子のことだ。時折、なかなか親の言いつけに注意を払わないことがあり、サップさんがウェイトレスとして高級バーで働いているあいだ、独りで留守番させるほど成熟していないからだ。だが、サップさんはほとんど他には選択肢がないと感じている。

当初、オハイオ州が3月にレストランやバーの休業を命じた時点では、サップさんには州の失業給付を受ける資格があった。だが5月になって州は職場に戻っても安全であると宣言し、サップさんのもとには、今後は受給資格がなくなるとの通知が届いた。サップさんは地元のレクリエーションセンターが主催する日中の学童キャンプに息子を登録しようとしたが、企画は中止されてしまった。

今後はさらに多くの問題が山積している。サップさんが暮らす学区では、9月に授業が再開されるときに、すべてオンライン授業とするか、2日間の短縮授業と3日オンライン授業の組み合わせにするかを選ばなければならないと親たちに通知した。だがどちらを選んでも、サップさんはランチタイムのシフトで働くことはできない。

「八方塞がりだ」とサップさんは言う。「どのような角度から見ても、正しい選択があるようには思えない」


Jonnelle Marte and Rachel Dissell(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新たな「パンデミックウイルス」感染増加 中国研究者がブタから発見
・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる


2020081118issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
楽天ブックスに飛びます

2020年8月11日/18日号(8月4日発売)は「人生を変えた55冊」特集。「自粛」の夏休みは読書のチャンス。SFから古典、ビジネス書まで、11人が価値観を揺さぶられた5冊を紹介する。加藤シゲアキ/劉慈欣/ROLAND/エディー・ジョーンズ/壇蜜/ウスビ・サコ/中満泉ほか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市政権きょう発足、初の女性宰相 財務相に片山さつ

ワールド

トランプ氏のアルゼンチン産牛肉輸入拡大案、米畜産農

ビジネス

米住宅金融公社2社のIPO、早ければ今年末にも=連

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、最高値更新 高市首相誕生
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 9
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 10
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中