最新記事

2020米大統領選

史上初、黒人女性の副大統領候補ハリスは、アメリカの分断を修復できるのか

Kamala Harris Makes History as First Black Woman VP Nominee

2020年8月12日(水)18時20分
アイドリアン・カラスキージョ

予備選から離脱しバイデン支持を表明したハリス Brendan McDermid-REUTERS 

<多様性を体現するカマラ・ハリスに、トランプ政権下で分断したアメリカを団結に導く期待がかかるが>

民主党が黒人女性を副大統領候補にしようとしていることは、これまでも報じられてきた。しかし実際にそうなることとは、また別の話だ。

何カ月にもわたる熟考の末の決断だった。人種差別抗議デモが全米に広がるきっかけとなった警察官によるジョージ・フロイドの殺害事件と、黒人女性を副大統領候補にしようという民主党全体の組織的な動きに後押しされて、ジョー・バイデンは、カリフォルニア州選出のカマラ・ハリス上院議員を副大統領候補者に指名した。アフリカ系アメリカ人の女性として初めて副大統領候補に選ばれたハリスは、歴史に名を残す存在なった。

「大統領は多くの重要な決定を下す」と、ハリスの指名を発表するメールのなかでバイデンは述べた。「しかし最初に下すのは、副大統領候補を誰にするか、という決断だ。ドナルド・トランプとマイク・ペンスに戦いを仕掛け、2021年1月からこの国を率いるうえで力になってもらう人物として、私はカマラ・ハリスが最高だと判断した」

民主党予備選でハリスの上級顧問を務めたエミー・ルイスは、本誌の取材に「バイデンはアメリカの魂を取り戻すために戦っているし、カマラはまだ実現していないアメリカの可能性を示している」と語った。

いくつもの史上初

「これは歴史的かつ、転換点になりうる選択だ」と、やはりハリスの顧問だったセルジオ・ゴンザレスは言う。「バイデンは経験を象徴し、ハリスは優れた判断力を象徴する。この組み合わせは民主党の未来の世代への懸け橋となる」

ハリスは昨年12月に民主党の候補指名争いから離脱した。しかし、もしバイデンが勝利し、初の黒人女性副大統領が誕生したら、ハリスは民主党の次世代のリーダーとなるだろう。

カリフォルニア州オークランド生まれのハリスは、みずから「オークランドの子供」と名乗っているが、父親はジャマイカ系、母親はインド系の移民だ。サンフランシスコ地区の検事長に選ばれた最初の女性で、もちろん白人以外の女性でも史上初だった。その後、穏健派の共和党候補に逆転勝利をおさめ、カリフォルニア州司法長官に就任した最初の女性となった。

バイデン陣営の発表によると、ハリスは「特に上院司法委員会では、汚職、女性の権利、選挙干渉などの問題で、アメリカ国民のために戦う闘士として頭角を現した」という。

最近、ハリスは民主党の警察改革法案の策定を仲間の議員とともに主導した。そこには捜査の際に首を圧迫して容疑者を拘束する「チョークホールド」の禁止、警官が民事訴訟の対象になることを妨げる免責適用の制限、警察官による26歳の黒人女性の射殺事件につながった無断の家宅捜索を可能にする令状の廃止などが含まれている。

<関連記事:バイデン陣営はこれで「ターボ全開」? 副大統領候補ハリス指名の意味

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB追加利下げは慎重に、金利「中立水準」に近づく

ビジネス

モルガンS、米株に強気予想 26年末のS&P500

ワールド

ウクライナ、仏戦闘機「ラファール」100機取得へ 

ビジネス

アマゾン、3年ぶり米ドル建て社債発行 120億ドル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 7
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 8
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 9
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 10
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 10
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中