最新記事

感染症対策

陽性者急増、名古屋の医師が懸念する「市中感染」のリアル

2020年8月6日(木)19時00分
関口 威人(ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

森亮太(もり・りょうた) /杉浦医院(名古屋市昭和区)院長、NPO法人ささしまサポートセンター理事長。1970年、名古屋市生まれ。現在、名古屋市医師会理事の他、外国人医療センター理事、名古屋労災職業病研究会代表も務める。著書に『長寿大国日本と「下流老人」』(幻冬舎)(筆者撮影)


全国で新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、陽性者の急増で心配されている名古屋市を中心とした愛知県。その現場の実態や直面している医療的、社会的な課題は何なのか。名古屋市医師会の感染症対策担当理事で、生活困窮者支援のNPO法人理事長も務める森亮太医師に聞いた。

「現場の感覚としては異常事態」

――名古屋の現状(インタビューは8月2日)についてどう見ていますか。

3月から4月にかけての第1波では、保健所がクラスターをまだ追跡できていた。しかし、7月に入ってからの陽性者の急増で、追い付かないほど市中感染が広がっているのは確かだ。現場の感覚としては異常事態だと受け止めている。

実際に軽症が多いのは事実だが、ほとんどが自宅療養で入院できていない。無症状から軽症、中等症へと刻々と変化する段階で、早急に対応できる態勢を整えなければならない。

――陽性率の高さやPCR検査の態勢不足が指摘されています。

名古屋の検査態勢は、市の衛生研究所やわれわれ医師会の検査を含めて何とか1日400〜500件。愛知県内には完全な民間のPCR検査機関がないので、検体は東京まで送って検査をしてもらっている。これが今準備中だが市内の医療組合の検査センターでできるようになり、唾液を使った検査も個々のクリニック単位でできるようになれば楽にはなる。しかし、市中感染が広がっていけば、それもすぐ足りなくなるだろう。

医師会としては、名古屋市に「もっと情報開示を」と訴え続けている。せめて市の何区のどこの施設で陽性者が発生したのかを、現場レベルに落としてもらいたい。しかし、市は医師会にも知らせてくれない方針を貫いている。

市中感染が広がっていない段階なら、「発熱や咳があるかどうか」はもちろん、「流行地域や人混みに行っていないか」「周りにコロナ感染者がいないか」などを診察の判断基準にし、これらに当てはまらなければ濃厚接触者ではないので大丈夫と言えた。しかし、いよいよそうではなくなった。少なくともこの店に行ったから検査が必要ではないかという判断基準としての情報が欲しい。本当は接触確認アプリ(COCOA)がもっと普及すればいいのだが。

――今はまだ夏だから深刻化していないという見方はできるのでしょうか。

夏だからコロナが重症化しないわけではない。むしろ、こんな真夏に熱が出る人というのは、コロナだと疑うことができる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

次期FRB議長の条件は即座の利下げ支持=トランプ大

ビジネス

食品価格上昇や円安、インフレ期待への影響を注視=日

ビジネス

グーグル、EUが独禁法調査へ AI学習のコンテンツ

ワールド

トランプ氏支持率41%に上昇、共和党員が生活費対応
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 9
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 10
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中