最新記事

ウクライナ機撃墜

撃墜されたウクライナ機、被弾後も操縦士は「19秒間」生きていた

Ukrainian Flight Recordings Reveal Passengers Alive After First Missile Hit

2020年8月24日(月)15時35分
スー・キム

1月8日、テヘラン郊外に墜落したウクライナ航空ボーイング737型機の残骸 Social media video via REUTERS

<イランのミサイル誤射一発目では全滅を免れたが、二発目が止めを刺したらしいことがブラックボックスの解析でわかった>

イランで1月、ウクライナの旅客機がミサイルの誤射で撃墜された事件をめぐり、イランの航空当局は23日、記者会見を行い、ブラックボックスから回収されたデータに「最長19秒」の操縦室内の会話が含まれていたと明らかにした。2基目のミサイルがウクライナ機に命中したのは1基目の25秒後だったという。

ウクライナ機は離陸直後に撃墜され、乗員乗客176人全員が死亡した。当初は技術的な問題で墜落した可能性も指摘されたが、その後、イランの革命防衛隊が同機に向け2基の地対空ミサイルを発射したことを認めた。AP通信によれば、ウクライナ機をミサイルと誤認したのが原因とされる。

事件当日、イランからイラク国内の空軍基地など複数の標的に向けてミサイル攻撃が行われた。これらの攻撃についても、革命防衛隊は関与を認めている。

イラン航空当局の責任者によれば、ウクライナ機の操縦室にいた2人のパイロットと1人の教官の会話が、最初のミサイルを被弾した直後の「最長で19秒間」にわたって残されていたという。

「同機は25秒後に2基目のミサイルを被弾した。(パイロットたちは)最後の瞬間まで航空機を操縦していた」と責任者は述べた。

人為ミスの重なりが悲劇を招いた?

またAP通信によれば、記者会見では1基目のミサイルの爆発で飛んだ破片によって記録装置が損傷を受けた可能性が指摘されたという。

ブラックボックスのデータからは、同機は被弾する直前まで「通常の航空路を」飛んでいたことも明らかになった。

「この(最初の被弾の)瞬間、電気的問題が起きて、教官の指示で補助動力装置のスイッチが入れられた。両方のエンジンは爆発から数秒間は動いていた」とこの責任者は言う。

「その時、客室からは何の物音も聞こえなかった。録音は19秒後に止まった」

操縦室内の会話についてそれ以上の詳細は明らかにされなかった。

誤射について、7月に出された中間報告書では、ミサイル発射部隊が誤った方向を見ていたことや、指揮官と隊員の間の連絡の不備、上官無視などの原因が重なった可能性が指摘されたとAP通信は伝える。

ミサイル発射部隊は、移動を命じられた後、正しい方角に向き直していなかった。担当の兵士らは司令センターと連絡を取らなかった上、ウクライナ機を脅威と誤認し、上官からの許可も得ず2度にわたってミサイルを発射した可能性があるとされたという。

<参考記事>ウクライナ機は本当にイランが撃墜したのか?
<参考記事>イラン軍司令官を殺しておいて本当の理由を説明しようとしないトランプ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=まちまち、堅調な決算受けダウは200

ワールド

トランプ氏「無駄な会談望まず」、米ロ首脳会談巡り

ワールド

EU通商担当、中国商務相と電話会談 希土類輸出規制

ワールド

欧州、現戦線維持のウクライナ和平案策定 トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない「パイオニア精神」
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    増える熟年離婚、「浮気や金銭トラブルが原因」では…
  • 10
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中