最新記事

事件

インドネシア、地元TV局スタッフが殴打・刺殺され遺体放置 謎だらけの事件にメディア騒然

2020年7月14日(火)18時20分
大塚智彦(PanAsiaNews)

民放テレビ局「メトロTV」の若手編集スタッフが発見された現場 KOMPASTV / YouTube

<ニュース番組スタッフの殺害事件。だが報道に関するトラブルでもないという......>

インドネシアの民放テレビ局「メトロTV」の若手編集スタッフが遺体で発見される事件が発生した。複数の刃物傷が残されていることや遺体がバナナの葉で覆い隠されていたこと、さらに所持品がほとんど奪われていなかったなどから地元警察は「物盗りではない殺人事件」との見方を強めて捜査を開始した。

かつては政府関係者、高級公務員や大物財界人、治安当局者などの腐敗や汚職、人権侵害などを追及する記者やマスコミ関係者が口封じと見せしめのために殺害される事件があったが、最近はそうした事件もほとんどなくなっていただけに、今回の事件の背景、犯人像、犯行動機などをめぐって様々な憶測が飛び交う事態となっている。

メトロTVのニュース番組で映像編集を務めていたヨディ・プラボウォ氏(26)は7月7日午後10時半ごろ、勤務先のメトロTVでの仕事を終えて退社、その後行方不明となった。

家族から「帰宅しない」との連絡を受けた警察が照会のあったヨディ氏所有のバイクを捜索していたところ、8日午前2時ごろに南ジャカルタ・パサングラハーンにあるウルジャミ・ラヤ通り近くのガソリンスタンドに駐車してあったヨディ氏所有のバイク「ホンダビート」を発見した。警察によるとバイクは発見時にはエンジンは冷えており、誰がそこにバイクを駐車したのか目撃者はいなかったという。

凧揚げ中の子供が遺体発見

その後もヨディ氏の捜索が続く中、10日午前11時45分ごろバイクが発見されたガソリンスタンドに近い高速道路の道路脇と一般道の間にある斜面のような空き地でコンクリートの塀際に男性の遺体があるのを凧揚げで遊んでいた子供3人が発見して、警察に届けた。

現場に到着した警察官によると、遺体にはバナナの葉がかぶせてあり、ヘルメットとジャケット、靴、バッグ姿でうつ伏せ状態だったという。所持品の中に運転免許証、身分証明書などがあり身元はすぐにヨディ氏と確認された。

遺体は近くのクラマトジャティ警察病院に運ばれ法医学チームによる司法解剖、検死が行われた。11日に記者会見したジャカルタ警察の報道官によると遺体には首と左胸に鋭利な刃物によるとみられる傷があり、さらに首には鈍器によるとみられる外傷も確認されたという。遺体の近くから犯行に使われたとみられる鋭利な刃物も警察によって回収され、指紋採取、血痕の血液型などの鑑識作業が続いているという。

現場で回収されたバッグの中や着衣のポケットなどから携帯電話、財布(所持金4万ルピア=約300円)、銀行のATMカード、納税者番号カードなどが発見、回収された。こうした所持品の状況から警察では「窃盗や強盗などの物盗りの犯行の可能性は低い」として「殺人事件」と断定して特別捜査チームを編成して犯人逮捕を目指している。


【話題の記事】
・新型コロナの起源は7年前の中国雲南省の銅山か、武漢研究所が保管
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・抗体なくてもT細胞が新型コロナウイルス退治? 免疫システムで新研究
・韓国、水族館のイルカショーで虐待議論 「素人のお客」乗せてストレス死も?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ビジネス

アルコア、第2四半期の受注は好調 関税の影響まだ見

ワールド

英シュローダー、第1四半期は98億ドル流出 中国合

ビジネス

見通し実現なら利上げ、米関税次第でシナリオは変化=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中