最新記事

北朝鮮

金与正に与えられた兄をしのぐ強硬派の役割

Where Is Kim Jong Un? Kim Yo Jong Takes On Increasingly Prominent Role

2020年6月17日(水)18時25分
ジェイソン・レモン

「アメリカは、南北関係の改善をめざす韓国の努力を全面的に支持し、朝鮮民主主義人民共和国に対し、さらに逆効果となる行動を控えるよう強く求める」と、報道官は語った。

北朝鮮分析の専門サイト「38ノース」のアナリスト、クリス・シュタイナイツ、ケン・ガウス、エリザベス・ヤンは5月1日に、以下のような分析を同サイトに掲載した。

「金総書記の妹、金与正の政治力は大きくなった。彼女は国外で最高指導者の代理を務め、北朝鮮の最高権力機関である政治局で、政治力のある地位についている。ここ数カ月、彼女は軍を指導し、経済と安全保障政策に関して公的な発言をすることを通じて、影響力が増したことを示した」

「金与正は段階を踏んで頭角を現し、より高い地位を獲得している。詳細は不明だが、これは統治の継承をめざす計画が進んでいることを示している。それは最高指導者になるために金与正を育てるか、あるいはおそらく摂政として、優れたリーダー役になることを確実にするだめだろう」

この計画は「完了までに数年かかる」可能性が高いともみている。

李教授は本誌に、金与正への注目の高まりは、北朝鮮の現実を考えると理にかなっていると語った。

「北朝鮮が今、妹を担ぎ出すのは筋が通っている。金正恩の子供たちは幼すぎて、少なくともあと20年は後継者の役目を担うことはできない。おそらく、金正恩は健康上の問題を抱えており、不測の事態に備えて対応策をたてる必要があると考えている」と、李教授は言う。

挑発はさらに続く

「金与正が勢いに乗っているのは、自分の名前で特定の『成果』を示す必要があるからだ。臆病な韓国と、北朝鮮にビラを散布する『人間のくず』の脱北者を罰することも、成果の一部だ」

これから北朝鮮の体制に何が起きるかは分からない。だが、朝鮮半島の緊張緩和と非核化を政権の優先事項とした韓国やトランプと交渉を行っていた時とは一転して、姿勢を硬化させたことは明らかだ。

トランプは金正恩と3回の注目度の高い首脳会談を行い、北朝鮮に足を踏み入れて最高指導者と会談した最初のアメリカの大統領となったが、どれも有意義な変化をもたらしていない。金政権は緊張の緩和についての交渉に応じる一方で、核開発とミサイルプログラムの拡大に取り組んできた、とほとんどのアナリストは考えている。

ストックホルム国際平和研究所が15日に発表した報告書によると、北朝鮮が保有する核爆弾は昨年の時点で20発から30発と推定されていたが、今では30~40発に増えている。

<参考記事>韓国を「敵」呼ばわりし、報復を示唆した北朝鮮の真意
<参考記事>【映像】北朝鮮、開城の南北共同連絡事務所を爆破 韓国統一部が確認

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

リクルートHD、求人情報子会社2社の従業員1300

ワールド

トランプ氏の出生権主義見直し、地裁が再び差し止め 

ワールド

米国務長官、ASEAN地域の重要性強調 関税攻勢の

ワールド

英仏、核抑止力で「歴史的」連携 首脳が合意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 6
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中