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トランプの対米デモ「武力鎮圧」発言に習近平「高笑い」

白人警官に押さえつけられ黒人男性が死亡したことに対する抗議は続く(6月3日、ロサンゼルス) Patrick T. Fallon-REUTERS

白人警官による黒人男性の死に抗議して全米にデモが拡大した。トランプ大統領の「暴徒化すれば軍を出動させる」発言に習近平国家主席は大喜びだ。天安門事件31周年を前に、トランプは香港問題で習近平を制裁しないと宣言した。

群衆に寄り添わなかったトランプ大統領

アメリカのミネアポリスで、無防備な黒人男性が白人警官に窒息死させられてしまった事件は、胸が痛む残忍な動画が流れたこともあって、世界に衝撃を与えた。

アメリカにおける人種差別には根深いものがあるが、トランプ政権になってからは白人至上主義が加速し、きつい仕事に従事しているためコロナ感染者の多くは黒人によって占められ、死者の割合に至っては白人の倍以上に上る。

そのことへの鬱積した怒りが爆発した側面もあったのだろう。

平等と正義を求めたデモが全米を覆った。それを鎮圧する米警察のどう猛さは、香港デモの際の香港警察の比ではない。

トランプがこの事態に対してどのような発信をするかが注目されたが、彼は5月31日、「猛々しい犬(警察犬)と武器」で暴徒と化したデモ隊を追い払えと言ったのだ。しかもこのデモは反ファシズム集団や極左集団が扇動しているのだから、「アメリカ国民を守るために」武力で鎮圧するという。

5月28日に中国の全人代で決議された香港「国家安全法」導入の決定には、「敵対的外国勢力の干渉を許さない」という文言があり、中国は「香港デモは海外勢力(=アメリカ)が煽っている」と非難してきた。

トランプが言った、この「極左集団」の中には在米の中国人が含まれているという。民主党を指すと同時に中国が煽っていると示唆したことになる。

なぜトランプはひとことでいいので、「不当に殺された黒人に同情する。警察という権力に代わって大統領として謝罪する」というメッセージを出せなかったのだろう。そうすれば、犠牲者だけでなく抗議デモ参加者の心は、どれだけ救われたかしれない。

コロナで分断されていたアメリカ社会はトランプのそのひとことで一つにつながる方向に、いくらかでも向かうことができたかもしれないし、そうしてこそ世界のリーダーとしての信頼を得ることができるはずだ。

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