最新記事

免疫

BCGワクチン、ポリオワクチンの効果を検証する動きが広がる

2020年6月15日(月)14時00分
松岡由希子

米国でも、テキサスA&M大学のジェフリー・シリーロ教授が、4月29日、医療従事者数百名を対象に、同様の目的で第4相試験(製造販売後臨床試験)に着手した。評価の結果は6ヶ月以内に明らかになるという。シリーロ教授は、「BCGワクチンは、免疫系を強化する作用、すなわち『訓練免疫』をもたらす。新型コロナウイルス感染症予防ワクチンが開発されるまでの間、これが大きな違いをもたらす可能性がある」と期待を寄せている。

BCGワクチンの接種と新型コロナウイルスの感染拡大との負の相関関係については、たびたび取り沙汰されてきた。世界保健機関(WHO)は、4月20日、「BCGワクチンが新型コロナウイルスの感染を予防することを示す証拠はない」との見解を明らかにしている。

1955年から1982年まですべての新生児にBCGワクチンの接種を義務づけたものの、それ以降は結核の有病率が高い地域からの移民のみに接種対象を限定しているイスラエルでは「定期接種を受けた世代とそうでない世代で、新型コロナウイルス感染症の発症率に差は認められなかった」との研究結果が示されている。

アメリカでは経口生ポリオワクチンの効果を検証する計画

BCGワクチン以外の感染症予防ワクチンでも、新型コロナウイルスへの効果を検証する動きがみられる。アメリカ食品医薬品局(FDA)傘下の生物学的製剤評価研究センター(CBER)らの研究チームは、6月12日、学術雑誌「サイエンス」で「弱毒生ワクチン、とりわけ経口生ポリオワクチンによって自然免疫を刺激すれば、新型コロナウイルス感染症を一時的に予防できるのではないか」との仮説を示し、今後、1万1000名を対象に臨床試験を実施する計画を明らかにしている。

これらの取り組みに対して懸念の声もあがっている。米カリフォルニア大学アーバイン校のマイケル・ブッフマイヤー教授は、米紙ワシントン・ポストの記事で、「これらのワクチンが、意図とは真逆の効果をもたらすかもしれない。免疫反応が過剰になり、最悪の場合、致命的な状態を引き起こしかねない『サイトカイン・ストーム』を招くおそれがある」と警告している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カナダ、USMCA見直しへ新対米貿易交渉担当者を起

ワールド

米長官、ハンガリーとの関係「黄金時代」 オルバン氏

ビジネス

欧州外為市場=円下落、予想下回るGDP受け ドルは

ワールド

EU諸国、国益の影に隠れるべきでない 妥協必要=独
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したスーツドレスの「開放的すぎる」着こなしとは?
  • 2
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 3
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 4
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 5
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 6
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 7
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    フロリダのディズニーを敬遠する動きが拡大、なぜ? …
  • 10
    アメリカが警告を発する「チクングニアウイルス」と…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 7
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 10
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中