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デーブが語る、『テラハ』木村花さんの死は何が問題だったのか

Toxic Cyberbullying

2020年5月30日(土)14時00分
大橋 希(本誌記者)

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日本の恋愛リアリティー番組ではかつての『ねるとん』が頂点だった、と語るデーブ HISAKO KAWASAKI-NEWSWEEK JAPAN

――番組が出演者を中傷から守ってあげる手段を作るべき?

『テラハ』の問題となった場面はいわば番組のハイライトで、製作側はむしろ大喜びですよ。木村さんはプロレスラーで、しかもヒール(悪役)。(製作側は)番組中のトラブルを想定するに決まっている。リアリティー番組でカップルが登場するなら、どこかで喧嘩したり、短気を起こしたり、泣いたりといったリアクションが求められる。求められるというか、リアリティーだから当然なんです。木村さんが何かトラブルを起こさないと、キャスティングミスにもなりかねなかったと思う。

ただ、もし番組があの洗濯機シーンを演出したのなら責任が増します。

今は、「SNSを見なければいい」という意見は言ってはいけないことになっている。でも実際、ひどいことが書いてあるなら「見ない」と決めちゃえばいい。あるいはコメント機能を止める、パブリック(公開)にしないとか、いろんなやり方がある。またはマネジャーに見てもらって、ひどいものは通報したり、製作側に相談する。「ひどいコメントは書かないでね」と注意しても、誹謗中傷する人はそんなのを聞くわけがないから。

名誉棄損など、民事で訴える手段もある。場合によっては刑事事件にもできる。ただ裁判は短くても1年くらいかかるし、お金もかかる。それ自体がストレスになる。だったら放っておくのが一番いい。

1つの問題は、今の芸能界ではSNSが仕事の一環になっていること。タレントによっては、事務所がブログなどをやらせている。フェイスブック、インスタグラム、TikTok、YouTube、ツイッター......これ、ストレスになりますよ。本人がやりたくてやっていればいいが、あまり向いていないとか、コメントを見たくない人には断る自由を与えるべきだと思う。

今回は番組打ち切りで止むを得ないかもしれないが、ある意味で誹謗中傷をやった人の勝ちになるから難しいですね。ならば、せめて検証番組をやるとか。

それから、アメリカや欧州では自殺のニュースを伝える場合、必ず記事などの最後に相談窓口の情報を書く。日本ももっとそういうのをやってもいいと思う。精一杯のフォローとしてね。

――有名税という考え方もあるが。

木村さんへの誹謗中傷はひどすぎるので、それが有名税と言ったら、誰も有名人にならないですよ。

どこまで耐えられるのか、というのがあって。例えば神田うのやデヴィ夫人だって、「自慢しやがって」とか酷いことを書かれていると思う。お笑い芸人だって「てめーなんて見たくないよ」「馬鹿野郎」とかすごいことを言われている。でも割り切って、そんなもんだと処理できる人は問題ない。

アメリカにTMZという芸能サイトがあるが、コメント欄は信じられないほどひどい。クレイジーな人が、侮辱するどころじゃない。でも正直言って、そんなのは見なければいい。「今はそうは言えないよ」って言うけど、それが僕には分からない。例えば電車やバスに乗って、怪しい人がいたらその人を避けるでしょ? 変な人のそばに行かなきゃいいというのは、当たり前のアドバイスじゃないですか。

SNSが出てくる前、つまりインターネット時代の前、ファンレターは全部開けて、変なものが入っていないかチェックしたうえで、タレントに見せていた。それが今は本人のアカウントに来ちゃうからチェックできない。番組が管理しているサイトだったら、あるいは事務所のサイトだったら管理して、削除できる。個人のSNSはそれができないから、それなりの対策が必要だ。

僕はテレビでいろんなことを言ったときは、どう言われているかなと、コメント欄を「目を細めて」見るんです(笑)。ちょっとやばそうな単語があったら、あとはもう見ない。

それから、ツイートを見たフォロワーが僕よりいいダジャレを返してくるから、いつも困ってます!

<2020年6月9日号掲載>

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2020年6月9日号(6月2日発売)は「検証:日本モデル」特集。新型コロナで日本のやり方は正しかったのか? 感染症の専門家と考えるパンデミック対策。特別寄稿 西浦博・北大教授:「8割おじさん」の数理モデル

◆ ◆ ◆


※自殺については、以下のような相談窓口があります。

こころの相談統一ダイヤル 0570-064-556 
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/kokoro_dial.html

いのちの電話相談 0570-783-556
https://www.inochinodenwa.org/soudan.php

東京自殺防止センター 03-5286-9090
https://www.befrienders-jpn.org/

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