最新記事

韓国事情

韓国、元慰安婦を支援する市民団体と尹美香前理事長の寄付金疑惑が問題に

2020年5月22日(金)15時30分
佐々木和義

元慰安婦を支援する市民団体の尹美香前理事長の寄付金疑惑が問題になっている Channel A-YouTube

<元慰安婦を支援する市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)と前理事長で4月の総選挙で当選した尹美香(ユン・ミヒャン)氏の不正疑惑が問題となっている...>

ソウル西部地方検察庁は2020年5月20日、元慰安婦を支援する市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)と前理事長で4月の総選挙で当選した尹美香(ユン・ミヒャン)氏の不正疑惑の捜査に着手した。

元慰安婦が正義連の会計に疑問を提起し、慰安婦問題の解決に役立たない水曜集会はなくすべきだと批判した。正義連は5月13日に主催した定例の水曜集会で寄付金の横領や流用はなかったと主張したが、次々と疑惑が浮上し、地検が捜査に乗り出したのだ。野党の一部は尹氏の議員辞職を求めるが、氏が所属する与党は事実関係の確認が先という立場を取っている。

元慰安婦の李容洙さんが告発

正義記憶連帯(旧韓国挺身隊問題対策協議会、以下、挺対協)は慰安婦問題が浮上した直後の1992年から毎週日本大使館前でデモを主催。2011年12月には大使館前に慰安婦像を設置し、韓国内外で慰安婦像の設置を推進して、慰安婦問題に関する諸場面で中心的な役割を担ってきた。そして代表の尹美香氏は2020年4月の国会選挙に与党から出馬して当選した。

5月7日、元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)さんが、団体に寄せられた義援金が元慰安婦のために使われていないと提起した。李さんは水曜集会に参加し、2007年と15年に渡米して慰安婦問題を訴えるなど、積極的な活動を行なってきた元慰安婦だ。

李さんはまた、憎しみだけを教える集会は教育にもならず、集会をなくすべきだと批判した。関連団体が出版した慰安婦の事例をまとめた本も「内容が検証されていない」と主張する。

補助金、寄附金をめぐって相次ぐトラブル

2015年、日韓両政府は慰安婦問題で合意し、日本政府が10億円を拠出して「和解・癒やし財団」が設立されたが、正義連の前身である挺対協は、元慰安婦と家族に財団の支援金を受け取らないよう説得した。1995年、当時の村山政権がアジア女性基金を主導したときも反対運動を展開し、挺対協の働きかけで、基金から償い金を受け取った元慰安婦は韓国政府の支援対象から外されている。

元慰安婦の故沈美子(シム・ミジャ)さんら元慰安婦13人が、2004年、挺対協が慰安婦のためになっていないとし、挺対協とナヌムの家に対する「募金行為およびデモ動員禁止仮処分」を裁判所に申請している。沈さんは、日本の最高裁から最初に認定を受けた元慰安婦だが、韓国政府の支援対象から外され、名簿からも除外された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

次期FRB議長は「大幅利下げを信じる人物」=トラン

ビジネス

金融政策の具体的手法は日銀に委ねられるべき、適切な

ビジネス

中国の若年失業率、11月は16.9%に低下

ワールド

米大統領3期目、憲法は「不明確」 弁護士がトランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中