最新記事

テクノロジー

中国の5G戦略が世界をリードする

The Long March to 5G

2020年5月16日(土)14時40分
ジョン・リー(メルカトル中国研究センター シニアアナリスト)

中国では年内に5G基地局が約50万基新設される予定 Keitma/SHUTTERSTOCK

<コロナ危機で各国の5G導入が遅れるなか、中国は国家主導でインフラ整備を着々と進めている>

新型コロナウイルスの感染拡大による行動制限が完全には解けていないのに、中国は5G関連プロジェクトにエネルギーを注入している。北京の中央政府は「5Gネットワークの建設へ向けて邁進する」とうたい上げた。

中国の国有通信事業3社は、既に100億ドル相当に迫る5G契約を締結し、今年中に5G機器に255億ドルを投資する予定だ。さらに中国の全都市に5Gの通信サービスを提供するため、基地局を約50万基新設する。これまでのところ、契約額の90%近くは中国企業の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)と中興通訊(ZTE)に、10%がスウェーデンのエリクソンに流れている。

欧州から見れば、中国への警戒心がさらに高まりそうな数字だ。欧州では新型コロナウイルスの感染拡大によって5G製品投入が遅れるなか、中国の国家主導による5G政策が優位に立つのではないかという懸念が強まっている。

今回のパンデミック(感染症の世界的大流行)における中国のプロパガンダへの怒りは、中国企業に対する欧州勢の警戒心につながってきた。1月にファーウェイの5Gネットワークへの関与にゴーサインを出したイギリスでさえ、ドミニク・ラーブ外相が「この危機の後、(中国と)これまでと同じようにビジネスを行うことはできない」と語ったほどだ。

米政府も中国のパンデミック発生源の隠蔽疑惑を理由として、「共産主義体制によって支配される可能性のある全企業の徹底的な調査」を実施し、アメリカのネットワークへの接続を許可すべきかどうかを検討するとしている。アメリカのこの姿勢は、中国につながる国際的な通信インフラプロジェクトに影響を与える可能性がある。

外国経済を羽交い締めに

この流れの中で、中国は5G競争を加速させている。既に中国政府は、2025年までに次世代情報インフラと「世界でもトップを行くモバイル通信ネットワーク」を構築する動きを進めている。ファーウェイはアメリカ発の技術に頼らずに、多くの5G基地局を売り出している。

この流れは、パンデミックによって増幅された。中国が5Gサービスを急速に拡大しているのは、産業の自動化を推進して企業がパンデミックによる行動制限に対処できるようにするためで、「経済的影響を相殺する新しい消費の可能性を解き放つ」(通信会社会長)ことが目的だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英右派「リフォームUK」、10年居住許可の販売提案

ワールド

イスラエル・イラン停戦発表を歓迎、実施強く訴える=

ワールド

トランプ氏、ネタニヤフ氏との会談で停戦仲介 高官ら

ビジネス

ECBの大規模国債買い入れ、例外ケースのみ導入すべ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 8
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 9
    「水面付近に大群」「1匹でもパニックなのに...」カ…
  • 10
    【クイズ】次のうち、中国の資金援助を受けていない…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中