最新記事

ウイルス

韓国そして中国でも「再陽性」増加 新型コロナウイルス、SARSにない未知の特性

2020年4月29日(水)17時49分

中国ではCOVID-19封じ込めに向けた戦いが新たなフェーズに入るなかで、相次ぐ再陽性が最前線の医師たちを悩ませている。写真は陰性になったと判断され、退院する女性を見送る病院のスタッフ。3月1日、武漢で撮影(2020年 ロイター/Aly Song)

防護服、二重のマスク、フェイスシールドを着用したデュ・ミンジュンさんは、ある朝、武漢郊外にあるアパートの1室を訪れ、マホガニー製のドアをノックした。

マスクを1枚着用した男性が、ドアを少しだけ開いた。デュさんが心理カウンセラーであると自己紹介すると、彼は突然ワッと泣きだした。

「もう我慢できない」と男性は言う。50代と思われるこの男性は2月初めに新型コロナウイルス陽性と判定され、2カ所の病院で治療を受けた後、武漢の工業地区にある、アパートが集まる地区に設けられた隔離センターに移送されたという。

最初に感染してから2カ月も経つのに、なぜまだ体内にウイルスが存在するという検査結果になるのか、と男性は問いかけた。

容態が回復してもなお陽性

中国におけるCOVID-19対策は、国内でのウイルス感染拡大を減速させることには成功した。しかし、封じ込めに向けた戦いが新たなフェーズに入るなかで、こうした問いへの答えは最前線の医師たちを悩ませる最大の謎の一つとなっている。

12月にウイルスが初めて確認された武漢では、医師たちが「容態は回復し症状は見られないのに、依然として検査では陽性となる患者の数が増大している」と話す。

医師たちによれば、こうした患者は全員、容態回復後のある時点で陰性と判定されている。だがその後、人によっては最大70日後に、再び陽性と判定された。多くは50─60日後に再陽性となっている。

ウイルスの拡散が減速するなかで、多くの国がロックダウン(都市封鎖)の解除と経済活動の再開を模索しているが、回復したはずの患者が引き続き陽性となり、したがって感染を広げる可能性があるという見方は、国際的な懸念の的になっている。

今のところ、世界的に推奨されている隔離期間は、ウイルスに暴露してから14日間とされている。

中国の医療当局者によれば、新たに再陽性となった患者が他者に感染させた事例は確認できていないという。

「再陽性」というカテゴリーに該当する患者について、中国は正確な人数を公表していない。だが、中国の複数の病院がロイターに開示した情報と、他メディアによる報道からは、そうした事例は少なくとも数十件に達しているようだ。

韓国では、4週間以上にわたって検査結果が陽性となる患者が約1000人を数える。欧州で最初にパンデミックの洗礼を受けたイタリアでは、新型コロナウイルスの患者が約1カ月にわたって陽性を示す可能性があることを医療当局者が認識している。

再陽性の患者にどの程度の感染力があるかという点については限られた知見しか得られていないが、武漢の医師たちは、こうした患者の隔離期間を延長している。

最も重篤な新型コロナウイルス患者が治療を受けている武漢・金銀潭病院のツァン・ディンギュ院長は、特に患者に感染力がないことが証明される場合であれば、隔離措置が過剰になりかねない可能性も医療当局者は認識している、と話す。だが今のところ、市民を保護するために隔離を延長しておく方がいい、と同院長は言う。

ツァン院長はこの再陽性患者の問題について、患者の病院が直面している最も緊急の課題の1つであるとし、精神的な重圧を緩和するために、冒頭のデュさんのようなカウンセラーが活用されていると話す。

「患者にこうした重圧がかかることは、社会にとっても負担になっている」


【関連記事】
・欠陥マスクとマスク不足と中国政府
・ベルギーの死亡率が世界一高いといわれる理由、ポルトガルが低い理由......
・東京都、新型コロナウイルス新規感染が112人確認 都内合計4000人を突破
・新型コロナウイルスをめぐる各国の最新状況まとめ(28日現在)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英GDP、第3四半期は予想下回る前期比+0.1% 

ビジネス

SBI新生銀、12月17日上場 時価総額1.29兆

ビジネス

アングル:ドル上昇の裏に円キャリーの思惑、ためらう

ビジネス

英バーバリー、7─9月期既存店売上高が2年ぶり増加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    「麻薬密輸ボート」爆撃の瞬間を公開...米軍がカリブ…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中