最新記事

北朝鮮

北朝鮮当局者、新型コロナの感染確認を認める

North Korea Has Reportedly Confirmed Coronavirus Cases for First Time

2020年4月21日(火)19時18分
スー・キム

それでも平壌での講演会の出席者たちからは、政府に批判的な声が上がったという。「出席者たちは、金正恩朝鮮労働党委員長は日々の生活に苦しんでいる国民のために何もしてくれなかったと言っていた。党の検閲ガイドラインが適切に実施されなかったことを(政府ではなく)国民のせいにしている、と批判していた」とこの人物は語った。

北朝鮮と国境を接する中国と韓国ではいずれも、新型コロナウイルスの感染拡大の早い時期に爆発的に感染者が増えていたことから、「感染者ゼロ」という北朝鮮の主張には疑念がもたれていた。

2月には、国連が北朝鮮での新型コロナウイルス感染拡大を阻止するために、一部の品目について制裁対象から除外する決定を下したが、北朝鮮はこれを拒否していた。北朝鮮の今の医療システムでは、感染拡大に対処しきれないと懸念した国連は、ゴーグルや体温計、聴診器などの医療物資について、北朝鮮への搬入を制裁の対象外にする構えだった。

朝鮮中央通信(KCNA)によれば、金は2月に当局者らとの会議の中で、「感染症が流入し得る全ての経路を完全に封鎖し、検査態勢と検疫態勢を強化する」よう指示。これ以降、同国の国境は封鎖状態が続いている。

WHOには依然「感染例の報告なし」

さらに北朝鮮は、国外との鉄道および航空便の往来をすべて停止し、空港や港などでの検査を強化。ロイター通信によれば、発熱などの症状がある者は全員、1カ月にわたって隔離される。またKCNAが4月18日に報じたところによれば、北朝鮮の当局者らは「陸・海・空の国境の完全封鎖に加えて、ほかにもまだ感染症が入り込む可能性のある隙間はないかを検証している」ということだ。

世界保健機関(WHO)は4月上旬、北朝鮮の保健省から(国内の感染状況について)「毎週報告を受けている」ことを明らかにし、平壌の研究所には、国民の検査を行なえるだけの対応能力があるとしていた。WHOによれば、同国内では現在も検査が続けられており、500人以上が隔離状態にある。

平壌に駐在するWHOのエドウィン・サルバドール事務所長はロイター通信に対して、「北朝鮮では4月2日までに、外国人11人を含む計709人が新型コロナウイルスの検査を受けた。感染例は報告されていない。現在、外国人2人を含む509人が隔離状態にある」と述べている。「12月31日以降、外国人380人を含む2万4842人が隔離を解かれている」

(翻訳:森美歩)

20200428issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月28日号(4月21日発売)は「日本に迫る医療崩壊」特集。コロナ禍の欧州で起きた医療システムの崩壊を、感染者数の急増する日本が避ける方法は? ほか「ポスト・コロナの世界経済はこうなる」など新型コロナ関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 7
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 10
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中