最新記事

感染症対策

トランプ一転、ファウチ感染研所長を解任せず持ち上げ

2020年4月14日(火)10時55分

ランプ米大統領は13日、ファウチ国立アレルギー感染症研究所長(左)の解任を主張するツイートにリツイートし、賛同する意を示した。7日撮影(2019年 ロイター/KEVIN LAMARQUE)

トランプ米大統領は13日、政権の新型コロナウイルス対策チームを率いるファウチ国立アレルギー感染症研究所所長を解任するつもりはないことを明らかにした。

ファウチ氏は前日、CNNのインタビューで、新型コロナ感染拡大を巡る政権の対応について、より早く外出自粛規制を導入していれば人命を救えたと発言。大統領はファウチ氏の解任を主張する投稿をリツイートし、賛同する意を示していた。

だが大統領は13日の記者会見で、ファウチ氏は「素晴らしい人物だ」とし、自身とファウチ氏は新型コロナ対策で「最初から」同じ意見を持っていると述べた上で、誰もがファウチ氏に満足しているわけではないと付け加えた。

一方、ファウチ氏は同じ会見で、CNNのインタビューでは仮定の質問に答えていたと説明。感染抑制策として全米でソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)を実施するとの同氏の提案をトランプ大統領はすぐに受け入れたと明らかにした。

これより先に、ホワイトハウスのギドリー報道官は「メディアの報道はばかげている。トランプ大統領がファウチ所長を解任することはない。ファウチ氏はこれまでもトランプ大統領に対する信頼の置けるアドバイザーだった。今後もあり続ける」と述べていた。

トランプ氏は12日、「ファウチ解任の時だ」とした共和党の元議員候補者のツイートにリツイート。人気が高いファウチ氏に我慢できなくなり、解雇する可能性があるとの憶測が浮上した。

ファウチ氏は抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンが効くという主張など、新型ウイルスの科学的見解を巡りトランプ氏と意見が対立したり、正すこともあった。

ファウチ氏はCNNのインタビューで、国立アレルギー感染症研究所が新型ウイルスについて米政権に対し早い段階で警鐘を鳴らしていたとする米紙ニューヨーク・タイムズの記事について、より早期に閉鎖措置を取っていれば人命を救えたと述べた上で、多くの要因が絡んでいるとの見方を示した。

ファウチ氏は「もちろん、より早く開始していれば良かったが、一つの要因によって今に至るとは言えないと思う」と述べた。「非常に複雑だ」と付け加えた。

ファウチ氏はトランプ氏との意見の対立から、既に右寄りの議員にとって批判の対象となっている。CNNのインタビューの後、非難の声は一段と高まった。

トランプ氏は12日、ニューヨーク・タイムズの記事について複数回にわたり「偽ニュース」とツイートし、非難した。

トランプ氏は先週、政権が毎日開催している新型ウイルスの会見で、ヒドロキシクロロキンに関する質問が出た際、ファウチ氏の回答をさえぎる場面があった。

1984年から国立アレルギー感染症研究所長を務めるファウチ氏は、共和党と民主党双方の大統領の下で指揮を取ってきた。2008年には当時のブッシュ大統領(子)から文民に贈られる最も名誉ある「大統領自由勲章」を授与されている。

一部の世論調査では、ファウチ氏の信頼度がトランプ氏を上回っている。

*内容を追加しました。

[ワシントン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・封鎖解除後のコロナ「震源地」武漢はこうなった
・新型コロナウイルス感染症で「目が痛む」人が増えている?
・猫のコロナ感染率は15%――「人→猫」「猫→人」感染は?
・気味が悪いくらいそっくり......新型コロナを予言したウイルス映画が語ること


20200421issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月21日号(4月14日発売)は「日本人が知らない 休み方・休ませ方」特集。働き方改革は失敗だった? コロナ禍の在宅勤務が突き付ける課題。なぜ日本は休めない病なのか――。ほか「欧州封鎖解除は時期尚早」など新型コロナ関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

関税の即刻見直しかなわないなら、合意は困難=日米交

ワールド

トランプ氏、中国の関税合意違反を非難 厳しい措置示

ワールド

中国、ブラジル産鶏肉の輸入全面禁止 鳥インフル発生

ビジネス

マクロ系ヘッジファンドへの関心高まる、市場の変動に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中