武漢「都市封鎖」の内幕 中国はなぜ新型コロナウイルス対策の初動が遅れたのか
ロックダウン
中央政府の動きは、その後すぐに武漢でも感じられるようになった。
武漢市政府関係者2人によれば、1月22日、武漢市政府高官のもとに、市外への移動の原則禁止、必要がある場合は居場所の報告を求める中央政府からの書簡が届いたという。
この情報提供者によれば、このときの指示にはそれ以上の詳細な情報は含まれていなかったが、同日夜8時ごろ、市当局者の一部に、武漢市が翌朝には封鎖されると電話での通達があったという。
ロックダウンが公式に発表されたのは午前2時であった。何千人もの武漢市民がなんとか市外に脱出しようと試み、混乱が生じた。
だが、武漢市内外を結ぶ交通手段はすぐさま遮断された。公共交通機関は運行を停止し、自家用車の使用も禁じられた。その後まもなく、住民の外出も禁じられた。
この危機で統制を把握した中央政府は同時に、武漢市・湖北省の政府の要人を数多く更迭した。
武漢の周先旺市長はその地位にとどまったが、数日後、国営メディアのインタビューで、何かにつけて党中央に報告する仕組みが早期対応の足枷になったと率直に認めた。
「もっと迅速に情報を公開するべきだった」と彼は言う。武漢市当局者としては、完全な情報公開に先立って「許可を得ることを余儀なくされた」ために、プロセスのスピードが鈍ったと市長は語る。
ニューノーマル
ロックダウンの実施からほぼ2カ月後、中国政府は武漢住民に市街に出ることや国内線の飛行機、都市間鉄道路線の利用を解禁した。公式データによれば、武漢で報告された新規感染者はこの1週間でわずか1人にとどまり、全患者の約93%が回復している。
だが、他国が武漢方式の隔離を検討するなかで、こうした数値への疑念も高まっている。トランプ米大統領は先週、中国の発表する数値について「少なめの数字」と発言し、中国政府の怒りを買った。
感染者が自覚症状のないまま感染を広めてしまう無症状患者のデータについては、中国もようやく先週から公表を始めたところだ。しかし国内のソーシャルメディアでは、政府の集計からかなりの数が漏れているという反発が起き、感染の第二波を引き起こすのではないかという懸念も強まっている。
政府の新型コロナウイルス対策本部の一員でもあった清華大学のスー・ラン教授は、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)などロックダウン時にとられた予防措置は、今後の中国では日常生活の一部として定着するのではないか、という。
「私たちの社会生活は、これまでとは違う新たな『普通』(ニューノーマル)へと移行していくだろう」と同教授は語る。
(翻訳:エァクレーレン)
[北京 ロイター]
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