最新記事

感染症対策

武漢「都市封鎖」の内幕 中国はなぜ新型コロナウイルス対策の初動が遅れたのか

2020年4月11日(土)12時40分

ロックダウン

中央政府の動きは、その後すぐに武漢でも感じられるようになった。

武漢市政府関係者2人によれば、1月22日、武漢市政府高官のもとに、市外への移動の原則禁止、必要がある場合は居場所の報告を求める中央政府からの書簡が届いたという。

この情報提供者によれば、このときの指示にはそれ以上の詳細な情報は含まれていなかったが、同日夜8時ごろ、市当局者の一部に、武漢市が翌朝には封鎖されると電話での通達があったという。

ロックダウンが公式に発表されたのは午前2時であった。何千人もの武漢市民がなんとか市外に脱出しようと試み、混乱が生じた。

だが、武漢市内外を結ぶ交通手段はすぐさま遮断された。公共交通機関は運行を停止し、自家用車の使用も禁じられた。その後まもなく、住民の外出も禁じられた。

この危機で統制を把握した中央政府は同時に、武漢市・湖北省の政府の要人を数多く更迭した。

武漢の周先旺市長はその地位にとどまったが、数日後、国営メディアのインタビューで、何かにつけて党中央に報告する仕組みが早期対応の足枷になったと率直に認めた。

「もっと迅速に情報を公開するべきだった」と彼は言う。武漢市当局者としては、完全な情報公開に先立って「許可を得ることを余儀なくされた」ために、プロセスのスピードが鈍ったと市長は語る。

ニューノーマル

ロックダウンの実施からほぼ2カ月後、中国政府は武漢住民に市街に出ることや国内線の飛行機、都市間鉄道路線の利用を解禁した。公式データによれば、武漢で報告された新規感染者はこの1週間でわずか1人にとどまり、全患者の約93%が回復している。

だが、他国が武漢方式の隔離を検討するなかで、こうした数値への疑念も高まっている。トランプ米大統領は先週、中国の発表する数値について「少なめの数字」と発言し、中国政府の怒りを買った。

感染者が自覚症状のないまま感染を広めてしまう無症状患者のデータについては、中国もようやく先週から公表を始めたところだ。しかし国内のソーシャルメディアでは、政府の集計からかなりの数が漏れているという反発が起き、感染の第二波を引き起こすのではないかという懸念も強まっている。

政府の新型コロナウイルス対策本部の一員でもあった清華大学のスー・ラン教授は、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)などロックダウン時にとられた予防措置は、今後の中国では日常生活の一部として定着するのではないか、という。

「私たちの社会生活は、これまでとは違う新たな『普通』(ニューノーマル)へと移行していくだろう」と同教授は語る。

(翻訳:エァクレーレン)

Cate Cadell Yawen Chen

[北京 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・新型コロナウイルス感染症で「目が痛む」人が増えている?
・気味が悪いくらいそっくり......新型コロナを予言したウイルス映画が語ること
・イタリア、新型コロナウイルス死者・新規感染がペース再加速
・新型コロナウイルス、男性の死亡リスクが高い理由
・TBSとテレビ東京、新型コロナウイルス対策で「全収録中止」 芸能界にも感染者で大英断


20200414issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月14日号(4月7日発売)は「ルポ五輪延期」特集。IOC、日本政府、東京都の「権謀術数と打算」を追う。PLUS 陸上サニブラウンの本音/デーブ・スペクター五輪斬り/「五輪特需景気」消滅?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪財務省、中東危機で物価上昇と経済打撃拡大を予測

ワールド

ウクライナ、パイプライン復旧支援受け入れ 原油供給

ビジネス

AI投資加速でハイパースケーラー債発行拡大へ、アマ

ワールド

タイ憲法裁、総選挙投票用紙の合法性に異議唱える申し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 2
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 3
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 6
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 9
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 10
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 10
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中