最新記事

ドイツ

メルケル首相のスピーチは世界から賞賛されたが、州財務相が自殺するなど混乱も続く

2020年4月1日(水)16時30分
モーゲンスタン陽子

ヘッセン州財務相が自殺

ドイツには105 の公式なホットラインがあるが、かかってくる電話の数は増え続け、オペレーターの対応も限界に達しているようだ。ほとんどの人は、感染の心配よりも、一人でいることの不安や孤独から相談してくるという。25日にはアンスバッハで、1人で留守番をしていた11歳の男の子が寂しさのあまり警察に電話、駆け付けた女性警察官がパンにチョコレートクリームを塗ってあげてなぐさめる、という出来事もあった。

自殺の増加も心配されている。29日にはヘッセン州のシェーファー財務相が自ら命を絶ってしまった。同氏は24日に州議会に新型コロナ危機対策の補正予算案を提示したところだったが、長期での見通しに絶望していたようだ。

トイレットペーパーをめぐり喧嘩、殴られた男性が病院行き(19日、マンハイム)、「コロナをばらまく」目的で地下鉄の券売機やエスカレーターの手すりを舐めた男が逮捕(23日、ミュンヘン)、一緒にビールを飲んでいた同僚の男性が咳をしたために仲間が殴りかかる(18日、ワイマール)など、一瞬耳を疑うような事件も増えている。

増えるDV被害

長引くロックダウンは、家庭内暴力(DV)被害を受けている女性や子供にとって非常に厳しい状況ともなり得る。ヨーロッパでDV発生率が最も高いとされるフランスでは、17日に始まったロックダウン以降、DV被害は全国で30%以上も増加、パリに限っては36%上昇した。当初は11日間の予定だったロックダウンは4月15日まで延長されている。

同様のことはドイツや他国でも考えられる。ドイツのギッファイ家族相は27日、DV被害対策として、ホテルをシェルターとして借り上げることなどを検討していると発表している。新型コロナ危機ではホテルに大量の空きが出ているが、これをホームレスの人々のシェルターとする政策はフランスやカナダなど他国でもとられている。ギッファイ家族相はまた、現在ギリシャに足止め状態となっている難民の子供たちを同様の措置でドイツに保護したいと考えている。

一方、ポルトガルは29日、移民・難民申請者全員に7月1日まで暫定的な市民権を認め、国内のすべての人が新型コロナ関連で必要な治療やサービスを受けられることを可能にした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、月内の対インド通商交渉をキャンセル=関係筋

ワールド

イスラエル軍、ガザ南部への住民移動を準備中 避難設

ビジネス

ジャクソンホールでのFRB議長講演が焦点=今週の米

ワールド

北部戦線の一部でロシア軍押し戻す=ウクライナ軍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 5
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 6
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 9
    40代は資格より自分のスキルを「リストラ」せよ――年…
  • 10
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中