最新記事

中国

習近平の武漢入りとWHOのパンデミック宣言

2020年3月12日(木)13時45分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

事実、たとえば、山東省の監獄では複数の囚人に感染して、その囚人と濃厚接触があった者を正確に報告しなかったというだけで、山東省司法庁中国共産党委員会書記等8人が更迭されてしまったことさえある。

だから、このデータは、中国にしては珍しく信憑性があると言っていいだろう。

すべての「方艙(ほうそう)医院」 (コンテナ病院)も閉鎖

2月末からは、武漢に突貫工事で建設した「方艙医院」 (コンテナ病院)は次々とクローズされていったが、それもまた武漢が安全になったことを意味している。習近平が武漢入りした3月10日午後には、最後の(16個目の)方艙医院も役目を終えて閉鎖された。入院していた患者が治癒して退院したために、もうコンテナ病院は必要なくなったということだ。

したがって、「人民戦疫」の「勝利宣言」は、一応、実質を伴っていたと言っていいだろう。

もっとも中国庶民の間では「真の功労者は誰か」という意味で、習近平の行動を「摘桃子(ズァイ・タオズ」(他人の栄誉を横取りして自分の功績とする)という言葉がささやかれているが。

湖北省以外の封鎖

そこまで抑え込みが可能だった理由はいくつもある。

湖北省以外の地区でも外出制限といった形での封鎖管理が行われていた。

外出制限が設けられた地区は、あまりに多いので全て列挙することは困難だが、たとえば(封鎖管理が出された順番に書くと)重慶市万州区や寧夏回族自治区銀川市を皮切りに、部分的に江蘇省、河南省、浙江省、黒竜江省、福建省、山東省、江西省、海南省、雲南省、安徽省、吉林省、河北省、遼寧省、広東省、天津市、北京市、上海市、陝西省、内蒙古自治区・・・の一部地域など、数十か所に及ぶ。

いかに中国全土に広がっていたかが分かるだろう。それは即ち、いかに安倍首相の決定が間違っていたかを如実に証明するものなのである。3月9日のコラムに「コロナ禍は人災」と書いた所以(ゆえん)である。

人民に「緑コード、黄コード、赤コード」を付けて監視

中国の人民はみな身分証明書を常に持参していて、その番号をパソコンに入力すれば、その番号の人物の全てが分かるというシステムになっている。また当局が監視したい人物の番号をパソコンに入力して監視すれば、その人物が今どこで何をしているか、その足跡を全てくまなくトレースできるようなシステムになっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政権、コロンビアやベネズエラを麻薬対策失敗国に指

ワールド

政治の不安定が成長下押し、仏中銀 来年以降の成長予

ワールド

EXCLUSIVE-前セントルイス連銀総裁、FRB

ビジネス

米政権、デルタとアエロメヒコに業務提携解消を命令
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中