最新記事

医療

新型コロナウイルス対策に必須の医療用手袋が世界で不足 最大の生産国マレーシアがロックダウン

2020年3月31日(火)10時38分

新型コロナウイルスとの闘いには、使い捨てのゴム手袋が必須だ。しかし、世界生産の5分の3を担うマレーシアでロックダウン(封鎖)が実施され、世界中の病院でゴム手袋が不足する恐れが生じている。写真はクアラルンプールにある手袋の生産ライン。2009年6月25日撮影(2020年 ロイター/Bazuki Muhammad)

新型コロナウイルスとの闘いには、使い捨てのゴム手袋が必須だ。しかし、世界生産の5分の3を担うマレーシアでロックダウン(封鎖)が実施され、世界中の病院でゴム手袋が不足する恐れが生じている。

世界最大の医療用手袋メーカーである同国のトップ・グローブ・コープは、1日当たり2億枚の生産能力がある。しかし、下請け業者の閉鎖により、手袋を梱包して出荷するための梱包箱の在庫が、残り2週間分に減ってしまった。

リム・ウィー・チャイ会長は「カートンがなければ手袋を病院に送れない。病院はわが社の手袋を必要としている。わが社は病院に必要な分量の50%を供給できない」と話す。

マレーシア政府は新型コロナの感染拡大を防ぐため、18日から4月14日まで約1カ月間のロックダウンを発表し、国民に外出を禁じた。手袋メーカーなど一部の業種では、厳密な安全基準を満たせば半分の人員による操業が認められるが、マレーシア手袋製造協会(MARGMA)は、業界をフル操業に戻してほしいと当局に訴え続けている状態だ。

梱包材メーカー、エトス・インプリント・テクノロジーのマネジングディレクター、エボンナ・リム氏は「当社は閉鎖されている。当社はロックダウンを免除される業種だが、それでも(操業には)承認が必要になる」と話した。

ニューヨーク大医学部の感染症専門家、セリーヌ・ガウンダー氏は、新型コロナ患者が増えたため、毎日、通常の6倍の枚数の手袋を使っていると説明。「手袋が不足すれば、血液を安全に採取できないため深刻な問題が生じる。多くの医療処置を安全に行えない」と言う。

世界から呼びかけ

米食品医薬品局(FDA)はウェブサイトで、一部の手袋は保存可能期間を過ぎても使えるとの見解を示した。米政府は24日、強制労働問題を理由に輸入を禁止していたマレーシアのある手袋メーカーへの措置を解除した。

英保健・社会福祉省は、マレーシアの省庁に対し「COVID―19(新型コロナウイルス感染症)との闘いに必要不可欠な」手袋の生産・出荷を優先するよう訴えた。手袋メーカー、スーパーマックス宛ての20日付の書簡をロイターが確認した。

MARGMAのデニス・ロー会長は「需要が極めて大きい」ため、配給制を検討していると説明。「手袋は最大限に生産できるが、梱包するものがない」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ南部オデーサの教育施設にミサイル、4人死

ワールド

ウクライナに北朝鮮製ミサイル着弾、国連監視団が破片

ワールド

米国務長官とサウジ皇太子、地域の緊急緩和の必要性巡

ビジネス

地政学的緊張、ユーロ圏のインフレにリスクもたらす=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 10

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中