最新記事

感染症対策

フィリピン、新型コロナウイルス非常事態に首都封鎖+夜間外出禁止令 ドゥテルテ、先手打つ手腕に高い評価

2020年3月14日(土)20時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

13日、事実上の「マニラ封鎖」を宣言したドゥテルテ大統領 ABS-CBN News /YouTube

<麻薬取締で強引ともいえる指導力を発揮してきた大統領が、感染症による非常事態にさらなる剛腕を振るった>

フィリピンのドゥテルテ大統領は13日までに新型コロナウィルスの感染拡大阻止のため、首都圏マニラへの緊急用件、特別例外ケースを除いたすべての人の出入りを制限する事実上の「マニラ封鎖」を宣言した。

また14日にはマニラ首都圏開発公団が、マニラ首都圏に夜間外出禁止令を15日から発令することを明らかにした。

封鎖は15日午前零時から実施され、夜間外出禁止は午後8時から翌日の午前5時までとなり15日午後8時から実行されるという。

こうした対応策は9日の「公衆衛生の緊急事態宣言」や1月27日までにフィリピンの国際的観光地ボラカイ島などを訪れていた中国人団体観光客をフィリピン政府が仕立てたチャーター機で帰国させるという「強制送還」などの一連の対策に続くものだ。

こうした早め、先手を打った大胆な感染防止対策を次々と打ち出すドゥテルテ大統領へのフィリピン国民の評価は高く、その強い手腕に感染拡大防止への大きな期待が寄せられている。

フィリピンは14日現在、新型コロナウイルスの感染者98人・死者8人となっている。ただ10日時点では感染者24人・死者1人に留まっていたものが、その後急に増えたこともドゥテルテ大統領が「首都封鎖」という思い切った決断に至った一因とみられている。

テレビを通じて国民に呼びかけ

12日テレビを通じてドゥテルテ大統領は「皆さんをコロナウイルスから守るためである」としてマニラ首都圏への人の出入り(陸路、海路、空路全てを通じた出入り)の禁止という重大方針を直接伝えた。

そのうえで「是非とも政府の方針に従ってほしい。ほんの少しの我慢である、それも自分自身のためである」と理解と協力を呼びかけた。もっともドゥテルテ大統領は当初「首都封鎖(ロックダウン・オブ・キャピトル)」という言葉を用いたが、政府は14日になって「封鎖」という表現を「コミュニティー検疫」という言葉に置き換えるよう伝達。現地のマスコミも「封鎖」という言葉を封印し始めているという。あまりに衝撃的な表現であるとの批判を受けた結果とみられている。

「コミュニティー検疫」とはフィリピンの最小行政単位である「バランガイ」ごとに感染監視を強化するという意味で、言葉が「検疫」に交代しても実施される内容に実質的な変化はないという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ相場が安定し経済に悪影響与えないよう望む=E

ビジネス

米製薬メルク、肺疾患治療薬の英ベローナを買収 10

ワールド

トランプ氏のモスクワ爆撃発言報道、ロシア大統領府「

ワールド

ロシアが無人機728機でウクライナ攻撃、米の兵器追
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 6
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 9
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 10
    【クイズ】 現存する「世界最古の教育機関」はどれ?
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中