最新記事

ヨーロッパ

新型コロナウイルス感染拡大にも慌てないフランスの手腕

2020年3月9日(月)13時21分
広岡裕児(在仏ジャーナリスト)

H1N1インフルエンザ対策で4期に分けた対策が立てられたが、今回の新型コロナウイス対策にも援用されており、国民にも今どの段階にいるのか周知されている。

hirookachart1.png
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/images/phase_jp.gif

hirookachart2.png
Plan national - Pandémie grippale - 2011、SGDSN

これまでのフランスの対応を、時系列で追った。

1月24日、武漢に滞在歴のある中国系フランス人が3人発症し、第1期(日本の厚生省の国内発生早期)に入った。

2月13日、ORSAN REB(既知または新興の伝染および生物学的リスクに対する例外的衛生状況における保健システム対応の組織)が発動される。

ORSANは2014年に「白プラン」を拡充して、1)事故・火災など、2)洪水など気候現象、3)伝染病、4)生物学的リスク、5)原子力・放射能・化学リスクの5種類の医療衛生上の緊急事態対策をまとめたものである。

その後、イタリアでの感染拡大を受けて、検査が強化された。それまでは、救急が必要と判断した症状のある者、濃厚接触の疑いのある者、感染地からの渡航者、にかぎられていたものを、感染した児童がいる学校全体や近隣住民に広げ、一般の医師からの求めにも応じることになった。1日400件だったキャパシティは数千にふやした。そのため2月25日には13人だった感染者が、27日には38人と3倍になった。

挙国一致で対応

第2期(日本の厚生省感染拡大期)に入ったと認識されると、新対策が、2月29日の臨時閣議で決定された。

クラスターでは感染地と周辺の市町村あるいは県単位で学校の休校、市場などの閉鎖、50人以上の集会禁止、検査の強化がおこなわれた。また全国規模で5000人以上の閉鎖空間での集会禁止。そのほかのものは主催者判断に任されるが、見本市など次々に中止や延期になっている。ただし、サッカーは通常通りにおこなわれている。年金改革反対デモも決行された。

これに先立つ27日、エドゥアール・フィリップ首相は全与野党の党首と両院議員団長を首相官邸に集めて2時間にわたる協議を行った。国会は年金問題を巡って厳しく対立しているが、メディアの取材を受けた参加者は右から左まで挙国一致を強調した。

政府も敏感に反応している。たとえば、3月3日には医療関係者用のマスク備蓄在庫から1000万枚を放出。4日にはマスク徴発(「徴用」とも訳されている)が発令された。国内のすべてのマスクの在庫と5月31日までに生産される分は国家管理となり、医療関係者と感染者に配布される。別の病気で必要な人も医師の診断書がなければ薬局で買えない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米P&G、通期コア利益見通し上方修正 堅調な需要や

ワールド

男が焼身自殺か、NY裁判所前 トランプ氏は標的でな

ビジネス

ECB、6月以降の数回利下げ予想は妥当=エストニア

ワールド

IMF委、共同声明出せず 中東・ウクライナ巡り見解
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中