最新記事

感染症

イタリア、新型コロナウイルス感染1万人突破 死者急増、全土に移動制限で経済活動停滞

2020年3月11日(水)08時35分

 3月10日、イタリア市民保護局は、新型コロナウイルスの感染による死者が168人増え合計631人になったと発表した。増加数は初めての国内感染例が確認された2月21日以降で最多に。ベネチアのサンマルコ広場で撮影(2020年 ロイター/Manuel Silvestri)

イタリア市民保護局は10日、新型コロナウイルスの感染による死者が168人増え合計631人になったと発表した。

増加数は初めての国内感染例が確認された2月21日以降で最多となった。全土に拡大された移動制限で経済活動に影響が出ている。

感染者数は1万0149人。増加率は10.7%と、過去数日に比べ大幅に鈍化したが、当局者らは、感染拡大が深刻なロンバルディア州の集計が不完全だと説明した。

これまでに感染が確認された人のうち1004人が完全に回復。回復者の数は前日の724人から増加した。集中治療室で治療を受けているのは約877人。前日は733人だった。

コンテ首相は前日夜、新型コロナウイルスの感染拡大封じ込めを狙った移動制限を国内全土に広げると発表。国民全員に対し、4月3日まで自宅に待機し、不要不急の移動を自粛するよう求めた。

首都ローマの高級住宅街にあるレストランの経営者マリオ・モンフレーダさんは「ひどい災難だ。すべてを失うことになる。新型ウイルスよりも、移動制限が引き起こす経済危機が原因で死ぬ人の方が多いだろう」と嘆いた。

一方、新型ウイルスによる死者の74%が集中するロンバルディア州のフォンタナ知事は、一段と厳格な措置を講じるよう中央政府に求めた。

「私ならば全ての小売店と公共交通機関を閉鎖し、経済に甚大な影響を及ぼす場合を除いて全企業に営業停止を要請するだろう」と述べた。

イタリアではこれまで、経済的に裕福な北部で感染者が急増したが、政府は感染がさらに拡大した場合、経済的な余裕があまりない南部の医療制度が崩壊し、死者数が急激に増えると懸念している。

移動制限を受け、10日はローマのトレビの泉などの観光名所が閑散となり、バチカン(ローマ教皇庁)はカトリックの総本山であるサンピエトロ大聖堂と同広場を観光客に対して閉鎖したと明らかにした。

少なくとも向こう3週間は、イタリア国内を旅行する場合、その理由を記入した書類を携帯する必要がある。スポーツ行事など屋外のイベントは中止となり、学校や大学も閉鎖となった。

この日のミラノ株式市場は3.3%下落し、初めての国内感染が確認される直前の2月20日以降では、29%下げている。国債利回りは急騰しており、同国が再び経済危機に見舞われるとの懸念が強まった。

*内容を追加して再送します。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・WHO「新型コロナウイルス、パンデミックの脅威に現実味 なお制御可能」
・スペイン、新型コロナウイルス感染者999人に急増 政府が近く支援策発表へ
・韓国、8日の新型コロナウイルス感染は過去10日で最低に 文在寅「安定局面に入る可能性」


20200317issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月17日号(3月10日発売)は「感染症 vs 人類」特集。ペスト、スペイン風邪、エボラ出血熱......。「見えない敵」との戦いの歴史に学ぶ新型コロナウイルスへの対処法。世界は、日本は、いま何をすべきか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、イラン首都に大規模攻撃 政治犯収容刑務

ワールド

ゼレンスキー大統領、英国に到着 防衛など協議へ

ワールド

プーチン氏、米の攻撃「正当性なし」 イラン外相と会

ワールド

イランのフォルドゥ核施設、「非常に重大な」損害予想
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「過剰な20万トン」でコメの値段はこう変わる
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 9
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 10
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中