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法廷で裁かれる性犯罪はごくわずか......法治国家とは思えない日本の実態

2020年2月26日(水)13時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

検察が被疑者を起訴するかどうかの判断も変わってきている。<図2>は、強姦罪被疑者の起訴率の推移だ。

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ご覧のように低下傾向にある。90年代では7割ほどだったが、2018年では4割まで下がっている。最近の起訴率を適用すると、「レイプ事件の何%が裁判所に行くか」という問いへの答えは、もっと残念なものになる。

性犯罪の無罪判決が相次いでおり、検察が起訴をためらうようになっているのかもしれない。だが近年の裁判所の判断は、一般市民から見れば理解しがたいものが多く、だからこそ性犯罪被害者が裁判官の研修会で講演するわけだ。

事件時、被害者はあまりの恐怖に体が凍り付いてしまうことも多い。こういう医学の知見を持っていれば、「酷い暴力・脅迫、被害者の必死の抵抗」という構成要件を適用するのには慎重にならざるを得ない。被害者の肉声に耳を傾け、認識に幅を持たせるべきだ。望ましいのは、合意のない性行為は罰するようにすることだろう。

性犯罪者に然るべき罰を科すには、(1)被害届の受理、(2)犯人の検挙、(3)犯人の起訴、(4)裁判での有罪判決、という過程を経なければならない。ここで導いたのは、(3)までの到達確率が1.92%という数値だ。法廷に引っ張り出されるレイプ犯は、推定全数の52人に1人。性犯罪者がほとんど放置されるという、法治国家とは思えない実態だ。

<資料:法務総合研究所『第4回犯罪被害者実態(暗数)調査)』(2013年)
法務省『犯罪白書』
法務省『検察統計』

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