最新記事

動物

首にタイヤ巻き付いたワニ救え! 豪からクロコダイル・ダンディーが参戦

2020年2月13日(木)14時55分
大塚智彦(PanAsiaNews)

懸賞金かけ、救出作戦挑戦者を公募

2020年1月には地元自然保護局がこのワニの首からタイヤを外す作業をする専門家を公募し始めた。当初はほとんど注目されなかったが同月下旬になって「タイヤを外すことに成功した人には懸賞金がでる」との情報が伝わり、地元や外国メディアも注目する大きなニュースとなった。

ただ、救出作戦には基本的に誰でも応募は可能だったが「危険が伴う作業につき野生動物の救出経験があること、そして野生動物の保護に熱意があり、なによりワニの捕獲に関するプロが対象で素人は対象外」などの厳しい条件がついていた。

また、懸賞金の額は伝えられておらず、資金源も公金ではなく地元自然保護局の局長がポケットマネーから支出するとのことで、金額はさほど高くないだろうと予想された。

こういった条件が影響してか、2月4日の期限までに条件を備えた挑戦者が誰一人として現れなかったことから「懸賞金付きの公募」は終了となり、環境森林省を中心にして今後の対応が改めて練り直す協議が実施されることになっていた。

名乗りを上げたのは豪ナショジオの看板男

otsuka200213_2.jpg

オーストラリア版「ナショナル・ジオグラフィック」の人気番組「アウトバック・ラングラー」でメインキャストを務めているマシュー・ニコラス・ライト(マット・ライト)


そこへ「救世主」のような挑戦者がオーストラリアから現れた。自然科学を取り上げるメディア「ナショナル・ジオグラフィック」オーストラリア版の人気番組「アウトバック・ラングラー」でメインキャストを務めているマシュー・ニコラス・ライト(マット・ライト)氏とクリス・ウィルソン氏の2人だ。共にワニに関する十分な専門知識、経験を有しているという。

ライト氏は自らのインスタグラムに「過去18カ月、このワニの状態と経過について興味をもってみていた。そして是非現地でこのワニを救うという活動をしてみたい」と書きこんでいた。

2人はまず現地パルを訪れて状況視察と関係者との協議を経た後、ジャカルタで環境森林省関係者などとの綿密な協議、調整を重ね、作業に従事する許可などを得て2月11日にパルに戻り本格的な準備に着手した。

12日に民放コンパステレビが現地からの中継で伝えたところによると、2人は現地関係者と協力してプラスチック製の浮き6個を付けた捕獲用のわなとなる鉄製の檻を用意、ワニがよく目撃されるという川の中ほどに設置した。エサはアヒルを用意し、とりあえず15日までタイヤを首に付けたワニがわなにかかるのを待つという。

ライト氏らはコンパステレビに対して「救出作戦がうまく行くよう期待している」と語った。

オーストラリアからの強力な助っ人を得た始まったワニの捕獲、救出作戦。オーストラリアとワニといえば、オーストラリアのジャングルでワニと格闘しながら生きるタフガイを描いたコメディー映画『クロコダイル・ダンディー』シリーズ(1986・1988・2001年)が有名だが、今回の作戦はコメディーで終わらないようにと、関係者は息を飲みながらわなを観察している。

otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など



20200218issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月18日号(2月12日発売)は「新型肺炎:どこまで広がるのか」特集。「起きるべくして起きた」被害拡大を防ぐための「処方箋」は? 悲劇を繰り返す中国共産党、厳戒態勢下にある北京の現状、漢方・ワクチンという「対策」......総力レポート。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相が辞任表明、米大統領令「一つの区切り」 総

ワールド

石破首相、辞任の意向固める 午後6時から記者会見

ワールド

インドは中国に奪われず、トランプ氏が発言修正

ワールド

26年G20サミット、トランプ氏の米ゴルフ場で開催
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 5
    ロシア航空戦力の脆弱性が浮き彫りに...ウクライナ軍…
  • 6
    金価格が過去最高を更新、「異例の急騰」招いた要因…
  • 7
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 8
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 9
    今なぜ「腹斜筋」なのか?...ブルース・リーのような…
  • 10
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 7
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 8
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 9
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中