最新記事

フェイクニュース

ネットに飛び交うニセ情報に危機感 新型コロナウイルス感染ゼロ続くインドネシア

2020年2月5日(水)18時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

新型コロナウイルスの感染者がいまだゼロのインドネシアでも、SNSを通じたデマや偽情報の感染は猛威を振るっている。写真は中国との航空便の運行停止措置がとられる前日のインドネシアの空港 Antana Foto Agency - REUTERS

<世界に感染が広がるコロナウイルス。周辺各国に感染者が現れるなか、安全な国までも、その恐怖ゆえに偽の情報が飛び交い始めた>

中国・武漢から広まり感染者が次々と報告されている新型コロナウィルスによる肺炎は、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の間にも拡大。2月5日現在いまだに「感染者ゼロ」を続けているインドネシアで今、ネットユーザーなどによる偽ニュース、誤情報の蔓延が大きな問題となっている。

インドネシアは、世界的観光地であるバリ島や世界遺産であるジャワ島・ボロブドール寺院などがあり、1月25日からの旧正月(春節)の休暇では多くの中国人観光客が訪問した。

これまでのところ新型肺炎のウイルスで感染の疑いがある患者は複数報告されているものの、検査の結果陽性となった患者は報告されていない。

ただ、バリ島にはこれまでに中国人観光客約5000人(この中には武漢からの旅行者約200人が含まれている)が中国本土への帰国便が運航中止になったことから取り残される事態となっており、今後の観察、検査で感染者が発見される可能性も残されている。

インドネシア保健省などは感染の疑わしき症例数や現在隔離して要観察状態にある患者数などを定期的に公表している訳ではなく、各報道機関が独自に数字を伝えているのが実状だ。

ジョコ・ウィドド大統領やテラワン・アグス・プトラント保健相らは「インドネシアでの感染確認者はゼロ」を強調する一方、国民に新型肺炎への警戒を呼びかけ、入国管理局や衛生局、総合病院から地方のクリニックまで万全の態勢をとるよう繰り返し指示を出している。

偽情報で女性2人を逮捕

そうしたなか、2月4日カリマンタン島東カリマンタンの州都バリクパパンの同州警察サイバ―犯罪捜査課はバリクパパン在住の女性2人を新型肺炎に関する偽情報をネット上に流した容疑で逮捕したと発表した。

警察は容疑者2人を名前のイニシャルでしか公表していないが、FS(39)とKR(年齢非公表)の2人で、お互いに顔見知りではないという。

2人はそれぞれネット上のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)サイトであるFace Bookに「バリクパパンの病院で新型肺炎の感染者が治療を受けている」と事実に反する書き込みをしてこの偽情報を拡散させた容疑がもたれている。

「ジャワ・ポス」紙によると、2人は警察の取り調べに対して「バリクパパンの人々に新型肺炎に対する注意と警戒をしてもらいたかった」と動機を述べており、共に「逮捕されるような事態になるとは思ってもいなかった」と話しているという。

インドネシア政府は3日に「新型肺炎に関する偽ニュースや誤情報については厳重に取り締まる」との方針を明らかにしたばかりだった。

今回逮捕に際して適用されたのは「情報電子商取引法(ITE)」違反の偽ニュース・誤情報流布容疑で、人権団体などが治安当局による恣意的運用で「表現の自由や報道の自由が脅かされる危険がある」と批判していた法律である。

今回逮捕された2人の女性は今後起訴されて裁判で有罪となれば、最高で6年の禁固刑が待っているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中