最新記事

中東

中東和平案、トランプの本音は何か

What Does Donald Trump's Middle East Peace Plan Say

2020年1月29日(水)19時30分
トム・オコナー

数十年前からアメリカの歴代政権は、中東紛争に平和をもたらすための仲介を試みている。オスマン帝国の統治領だったパレスチナは、第一次世界大戦後にイギリスに委任され、その後国連は47年のパレスチナ分割決議で、イスラエルとパレスチナの領土を設定した。だがパレスチナ人と周辺のアラブの国々は国連決議を不当とし、イスラエルとの間で何度も衝突が起きてきる。

70年代後半、当時のジミー・カーター大統領は、大統領の別荘キャンプ・デービッドにイスラエルとエジプトの首脳を招き、ヨルダン川西岸とガザ地区におけるパレスチナ「自治」政府への支援を含むエジプトとイスラエル間の合意を促進した。

ビル・クリントン大統領は、93年に交渉が始まったイスラエルとパレスチナの合意(オスロ合意)にむけて尽力し、最終的にはパレスチナ自治と統治の限定的な確立をもたらしたが、和平合意の締結には至らなかった。

クリントンは2000年にキャンプ・デービッドの会談で残った不満を解決しようとしたが、成功せずに終わった。パレスチナの新たな蜂起とイスラエルの弾圧によって暴力が急増した。

ジョージ・W・ブッシュは、イスラエルと共存するパレスチナ国家の樹立を求めた最初の大統領であり、国連、欧州連合、ロシアと共同で策定した戦略「和平のロードマップ」でこれを達成しようとした。この計画には、停戦、パレスチナ人の経済回復、そして最終的な地位協定を含む3つの段階が含まれていた。

交渉は次々に頓挫

07年に行われた中東和平国際会議では、ロードマップ実現の最終的な取り決めをまとめるためにイスラエルとパレスチナの指導者がメリーランド州アナポリスに集まったが、条約締結は実現せず、再び紛争に突入した。

バラク・オバマ大統領はイスラエルとパレスチナを交渉のテーブルに戻した。ネタニヤフは初めて将来のパレスチナ国家樹立への潜在的な支持を表明したが、イスラエルとパレスチナの国境線は「第3次中東戦争前の 1967年合意に基づくべき」というオバマに反発、交渉の前提となる入植停止を拒んだため、交渉は頓挫した。アッバスがハマスと和解しようとしていたことも、交渉の崩壊につながった。

トランプは28日、みずからの和平案を打ち出したことで、自分は前任者のオバマとは違うところを見せようとした。

「過去において、最も善意から出た計画でさえ、具体的な事実の詳細についてはあまり触れておらず、概念的な枠組み論に重きが置かれていた。対照的に、この計画は80ページもあり、これまでで最も詳細な提案だ」と、トランプは述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

赤沢再生相、5500億ドルの対米投資で米国と覚書に

ビジネス

9月利下げ支持は未定、雇用・物価統計など考慮へ=シ

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、4万3000円台回復 自

ビジネス

実質消費支出7月は+1.4%、3カ月連続増 自動車
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害」でも健康長寿な「100歳超えの人々」の秘密
  • 4
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 5
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 6
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    世論が望まぬ「石破おろし」で盛り上がる自民党...次…
  • 9
    SNSで拡散されたトランプ死亡説、本人は完全否定する…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中