最新記事

日本社会

できる子、裕福な子が標的になる、日本のいじめの特異な傾向

2020年1月29日(水)15時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

data200129-chart02.jpg

<表1>は、15歳生徒を数学の学力で3つのグループに分け、からかわれる頻度を比較したものだが、日韓と欧米諸国の違いが見て取れる。日本と韓国では、できる子がいじめに遭いやすい。

ただ地域による違いもあるだろう。家が裕福な子(できる子)が被害に遭いやすいのは、とりわけ学区の住民の階層構成が低い学校で、階層構成が高い学校ではその逆ではないかと考えられる。集団から浮く異質な存在がターゲットになりやすい。

いじめの被害は、どの子にも一様に分布しているのではない。当人の属性に関わる諸変数と関連していて、後者から前者を予測する式も作れる。その昔、幼児の家庭環境、居住地域、知能指数(IQ)といった変数から、将来非行化する確率をはじき出す「非行予測」の研究がされていた。進化を遂げているAIに、これまでのいじめの事案(数万件、数十万件)のデータを覚え込ませれば、精度の高い予測式を編み出してくれるだろう。

「この子は危ない」などと親や教師に先入観を与えるのは好ましくないが、いじめの防止に関しては、科学的手法を取り入れることも必要だ。

<資料:OECD「PISA 2018 Results WHAT SCHOOL LIFE MEANS FOR STUDENTS' LIVES VOLUME III」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

韓国大統領、23日に日本訪問 石破首相と会談へ

ビジネス

ネクソン、7―9月期は減収減益予想 通期見通しは開

ワールド

ウクライナ大統領、トランプ氏との電話会談のためベル

ビジネス

日経平均は6日続伸、初の4万3000円台 米利下げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が教える「長女症候群」からの抜け出し方
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...気になる1位は?
  • 4
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 5
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 6
    【徹底解説】エプスタイン事件とは何なのか?...トラ…
  • 7
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    トランプ「首都に州兵を投入する!」...ワシントンD.…
  • 10
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 1
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 2
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの母子に遭遇したハイカーが見せた「完璧な対応」映像にネット騒然
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 5
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中