最新記事

中国

一党支配揺るがすか? 「武漢市長の会見」に中国庶民の怒り沸騰

2020年1月29日(水)12時35分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

ネットユーザーたちは「おいおい、足し算もできないのか!」と荒れ始めた。

さらに荒れたのは、湖北省の省長が「医療用防護服やマスクなど、防護物質が特に足りなくて困っている」と言ったのに対して、武漢市の市長は「湖北省は防護物資に関する生産が素晴らしく、その問題は解決している」と真逆のことを言ってからのことだった。

武漢市長に対する怒りで炎上するネット

その時間帯あたりからネットは炎上し始めたのだが、もっとお粗末なことが起きた。

記者会見を終えてエレベーターに乗ろうとしていた武漢市市長がCCTVの記者にテレビカメラとマイクを向けられた。すると市長は

「武漢がすぐに情報を発信できなかったのは、上層部が私に発表する権限を与えてくれなかったからだよ」

「もっとも、武漢市封鎖の決定は、この私が下したんだけどね」

という、全く逆のことを言ってしまったのである。巨大なウソをついたわけだ。

このあとさらに、テレビの撮影が続いていると思わなかったらしく、

「どう?さっきの俺の回答、良かったでしょ?80点は取れたかな?」

と言ったのだ。

この声と顔をテレビカメラはキッチリ収録し、かつ、そのまま得意げにエレベーターに乗る市長の後ろ姿まで収めていた。

こちらの動画をご覧いただきたい。

「80分」というのは「80点」のことだ。中国語で「ba-shi-fen(バースーフェン)」と言っている声を聴き分けることができるだろうか?

「俺、すごいだろ?」

と言っているのである。このページの下の方にある「湖北F4」というのは「湖北の4大悪人」という意味だ。中国ではよくこの「F4」を使うが、これは「花より男子」という日本の漫画を台湾で実写ドラマ化したFlower4がかつて中国大陸で大ヒットし、それから何にでも「F4」を付けて若者が表現する。「湖北4大悪人」を「湖北F4」と名付けているということは、若者が反抗していることを意味している。

ネットは炎上し、中国版ツイッターのウェイボー(weibo)では

「おぞましいばかりの無能ぶり!」

「なんという厚顔無恥な無責任ぶり!」

「早く辞めろ!」

「もう正常ではない領域に入っている」

などと、激しいバッシングが飛び交っている。

若者だけでなく、民衆の憤怒は「北京連盟」でも報道されるなど、大陸内の多くのサイトで報道されている。おまけに削除されていないのである。地方政府の「愚かさ」を中国人民に知らせることは、北京の中央政府にとっても悪いことではないと考えているように思われてならない。

500万人の武漢市民がすでに逃げ出している

最も庶民の怒りを招いたのは、武漢市市長が「新型肺炎が始まってから、もう500万人が武漢を離れてるさ」と言ってのけたことだ。

武漢市民が全員コロナウイルスを持っているわけではないにしろ、感染している可能性は他の地域より高い。そういう人たちが全国のどこに動いていったかは全く掌握していないまま、この数値を突然明らかにしたのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、代替関税率を10%から15%に引

ビジネス

エヌビディアやソフト大手の決算、AI相場の次の試金

ワールド

焦点:「氷雪経済」の成功例追え、中国がサービス投資

ワールド

焦点:米中間選挙へ、民主党がキリスト教保守層にもア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 2
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官が掲げる「新しいスパイの戦い方」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 7
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 8
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 9
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 10
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 9
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 10
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中