最新記事

中国

一党支配揺るがすか? 「武漢市長の会見」に中国庶民の怒り沸騰

2020年1月29日(水)12時35分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

新型ウイルス肺炎拡大で封鎖された武漢市 China Daily/REUTERS

1月26日に湖北省と武漢市のトップが開いた記者会見に「低レベル!」「無能!」「無責任!」と中国庶民の怒りが沸騰。中央政府も同意なのか罵倒の嵐を削除していない。地方と中央が責任転嫁をしているようだ。

露呈した湖北省と武漢市の「愚かさ」

1月26日、湖北省省長と、その省都である武漢市市長などが記者会見を行った。新型コロナウイルス肺炎発生後、初めての記者会見だ。新型肺炎は野生動物を売っていた武漢市の生鮮市場から始まっている。

だから謝罪でもするのかと思ったら、その会見は中国庶民を落ち着かせるどころか、「火山口」に向けて庶民を追いやったと中国のネットは炎上している。

下の図は、記者会見の場面をネットユーザーがスマホで撮影し、手書きなどで湖北省と武漢市を批判する文言を書き込んだ画面の一つだ。赤文字は投稿者が書いたもの。

Endo200129_wuhan2.jpg

●向かって左側にいるのが中国共産党湖北省委員会秘書長の別必雄。彼は鼻にマスクが掛かってない形でマスクを付けている。「このようなマスクのつけ方をしてはなりません」と、分刻みと言っていいほど、中共中央管轄の中央テレビ局CCTVを始め全ての政府機関が報道し続けているのに、「このマスクのつけ方はなんだ!」と、大陸のネットユーザーは先ず噛みついた。

●真ん中に座っているのは湖北省の省長である王暁東。彼はなんとマスクをつけていない。そこでこの落書きには「全会場でただ一人、マスクをつけていない」と書いてある。湖北省だけでなく、中国全土で今やマスク、マスクと、どこでもマスクをつけ、特に湖北省では新型肺炎のこれ以上の伝染を増やさないようにするために、厳しくマスクをするように言いまくっているというのに、その省長がマスクをせずに大勢が集まる記者会見場に現れるとは「何ごとか!」と、これもネットユーザーを「火山口」に近づけている。

●一番右側に座っているのが、武漢市市長の周先旺だ。彼はマスクの上下をさかさまにし、裏を表にして掛けていると、批判が集中している。

武漢市市長に批判が集中しているのは、1月24日のコラム<新型コロナウイルス肺炎、習近平の指示はなぜ遅れたのか?>に書いたように、そもそも今般の最大の責任は武漢市にあるからだが、武漢市市長に関しては会見で以下のような展開があったからだ。

武漢市市長はまず、「(湖北省)仙桃市の防護服や医療用マスクの生産能力は素晴らしく、各種マスクの年生産能力は108億個で、そのうち民間用が8.8億、医療用が9.7億だ」と言った。

「8.8+9.7=18.5」で、合計個数と内訳が合わない。

すると脇(にいる事務方?)からメモが指し出されて、市長は「あ、言い間違えました。108億ではなく、18億でした」と訂正したのだが、すると又もやメモが指し出され、今度は「あ、間違えました。我が省のマスクの生産量は108万個でした。いやはや、億ではなく万でした。単位を間違えて...」と、修正を繰り返したのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い

ワールド

米航空会社、北東部の暴風雪警報で1000便超欠航

ワールド

ゼレンスキー氏は「私が承認するまで何もできない」=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中