最新記事

感染症

新型コロナウイルス死者106人、北京でも 世界株安進行、米国は中国への渡航自粛勧告

2020年1月28日(火)15時55分

トランプ米大統領は27日、中国を震源とする新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大について、必要な支援を提供すると表明した。これまでの死者は81人に上り、国営中央テレビ(CCTV)によると、北京市でも初めての死者が確認された。北京の天安門広場で撮影(2020年 ロイター/CARLOS GARCIA RAWLINS)

中国の保健当局は28日、湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎を巡り、死者数が106人となり、北京で初の死者が出たことを明らかにした。米政府は27日、中国への渡航を自粛するよう勧告。金融市場では中国経済への打撃を巡る懸念が広がっている。

中国国家衛生健康委員会によると、死者は前日の81人から106人に増加。6人を除いて全員が湖北省武漢市の患者だったという。国内で確認された感染者は27日時点で4515人と、前日の2835人から増加した。

新華社によると、訪中した世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、王毅国務委員兼外相との会談で、中国には新型コロナウイルスの感染を管理・抑制できる力があると確信していると述べた。一方、現在中国にいる外国人の退避は推奨しないとし、冷静な対応を呼びかけた。

また事務局長は、中国との連携強化の方針も打ち出した。

27日は新型肺炎への懸念で世界的に株が売られ、米主要株価指数はいずれも1.5%超下落。原油価格も3カ月ぶりの安値を付けたたほか、人民元も年初来安値まで下げた。市場は、世界第2位の経済大国である中国が、感染拡大を受けた移動の禁止や春節(旧正月)の連休延長で打撃を受けると不安視している。

28日のアジア市場でも株価が下落。中国市場が休場となる中、オフショア人民元や豪ドルが売られているほか、原油も軟調となっている。

中国以外ではこれまでに日本、タイ、オーストラリア、米国、フランス、カナダなどに加え、ドイツとスリランカ、カンボジアで新たに患者が確認されているが、今のところ死者は報告されていない。

トランプ大統領は、新型肺炎の感染拡大について、必要な支援を提供すると表明。「新型ウイルスについて中国と極めて緊密に連絡を取っている。米国内で確認された感染件数はまだ非常に少ないが、注意深く見守っている。習主席にはいかなる支援も提供すると伝えた。米国には類まれな専門家がいる!」とツイッターに投稿した。

米疾病対策センター(CDC)は27日、米国内で新たな感染例は見られていないと発表。これまで5人の感染が確認されているほか、全米26州で110人が検査を受けており、そのうち32人が陰性反応を示しているという。

2件の国内感染を確認しているカナダは、湖北省訪問を避けるよう国民に呼び掛けた。

タイは28日、中国からの渡航者で新たに6人の感染を確認し、国内の感染者数が14人となったことを明らかにした。新たに確認した6人のうち5人は湖北省からの渡航者で、同一家族のメンバーという。

韓国政府は、新型肺炎の拡大阻止に向けて全力で臨むと表明、予算に計上している感染症対策費などを活用する構えを示した。また、ボラティリティーが高まった場合は金融市場の安定化に動くと強調した。

中国の国連大使は27日、グテレス国連事務総長と会談後、中国政府は感染拡大の阻止を「最重要」と位置付けていると強調。「透明性と科学的な協力の精神の下、国際社会と協調している」と述べた。

グテレス事務総長は、国連として「感染拡大を阻止する中国の能力を完全に信頼しており、あらゆる支援を提供する用意がある」と表明した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米との鉱物協定「真に対等」、ウクライナ早期批准=ゼ

ワールド

インド外相「カシミール襲撃犯に裁きを」、米国務長官

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官を国連大使に指名

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中