最新記事

オーストラリア

オーストラリア森林火災、「ウォンバットが野生動物を救出」は本当?

2020年1月17日(金)14時30分
松丸さとみ

ウォンバットの巣穴からうさぎやコアラが ...... Riff Raff-Twitter

<ウォンバットが、野生動物を自分の巣にかくまって火災から助けているというニュースがソーシャルメディア(SNS)で拡散されたが、本当か?>

ウォンバット、野生動物を誘導して避難させる?

昨年9月に始まったオーストラリアの森林火災は、広大な土地と10億匹と言われるほどの野生動物を焼き尽くしてもなお、収束する様子は見えてこない。そんななか、ウォンバットが、野生動物を自分の巣にかくまって火災から助けているというニュースがソーシャルメディア(SNS)で拡散された。中には、「政府よりもリーダーシップを発揮している」と主張するツイートもあった。

専門家はこうした話の一部については「ウォンバットの生態からしてあり得ない」と否定しているものの、完全な作り話というわけではないとの考えを示している。ウォンバットが地中に掘る巣が、小動物にとって森林火災からの「避難所」として機能しているというのは本当らしい。

ウォンバットはオーストラリア固有の動物で、コアラやカンガルーなどと同様、有袋類の哺乳類だ。体長70〜120センチと比較的大型で、普段は地中に穴を掘り、その中で暮らしている。その巣穴は非常に長く、ところどころが部屋になっているという。

SNSで拡散された内容は、「ウォンバットは、森林火災で行き場をなくして自分の巣穴にやってきた小動物を受け入れている」というものと、「まるで羊飼いの犬のように、小動物を自分の巣穴に誘導してあげている」という2点だ。

「近眼のウォンバットに誘導は無理」と専門家

グリーンピース・ニュージーランドは9日、インスタグラムに次のように投稿した。

「オーストラリアからの報告によると、数えきれないほどの小動物は、巨大で複雑な巣穴をシェアしてくれるウォンバットのおかげで、死から逃れられているようです」

この投稿には当初、「ウォンバットが"羊飼いのように誘導している"様子が観察されたとの報告もあります」と書かれていたが、現在はこの文章には打ち消し線が引かれ、「オーストラリアで投稿されたSNSからシェアした話でしたが、間違いであることが分かりました」とカッコ書きで説明が加えられている。

豪慈善事業団体ウォンバット・ファウンデーションの代表ジャッキー・フレンチ氏が、英ポピュラーサイエンス系ウェブサイト「IFLS」にした説明によると、ウォンバットはかなりの近眼で、食べ物と土しかほとんど見ていない。他の動物を誘導することは無理であろうし、自分もウォンバットのそんな様子をみたことはない、と同氏はIFLSに話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ガザ市住民の避難に新ルート開設 48

ワールド

デンマーク、グリーンランド軍事演習に米軍招待せず=

ビジネス

カナダ中銀、利下げ再開 政策金利3年ぶり低水準

ビジネス

米一戸建て住宅着工、8月は7%減の89万戸 約2年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    「アフリカでビジネスをする」の理想と現実...国際協…
  • 10
    「60代でも働き盛り」 社員の健康に資する常備型社…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中