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敗れたのは習近平──台湾総統・蔡英文圧勝

2020年1月15日(水)12時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

時代は変わった。今まさに変わりつつある。

香港の「時代革命」が台湾を甦らせている。

アジアのこの一角に「民主」へのエネルギーの塊がある。

トランプが「台北法案」に署名すれば、中華人民共和国が「中国」の唯一の代表として国連に加盟したあの屈辱を晴らし、もしかしたら台湾が「中華民国」として独立して国連に加盟する日が来るかもしれない。

これこそは東アジア最大の地殻変動ではないか。

これが実現すれば香港の「自由と民主」への渇望も夢ではなくなるかもしれない。

そしてそこには中国大陸と違って、アメリカと対立しない、安全な経済発展を保証する可能性が広がっている。

日本はどちらを選択するのか

東アジアは今、その分岐点にある。

それを左右するのは「日本の選択」だ。

日本は民主主義国家を選ぶのか中国共産党による独裁国家を選ぶのか。いまその分岐点にいる。

日本が「自由と民主」を選べば日本国民の尊厳は保たれる。それこそが真の「アジアの平和」なのではないだろうか。

安倍首相はしかし、この輝かしい「民主」を選択せずに、独裁国家の頂点に立つ習近平を国賓として迎えようとしている。それが今、どれほど愚かな選択であるかを熟考してほしい。

安倍首相は昨年末、日中首脳会談を行って「日中にはアジアの平和を守る責任がある」と習近平に誓いを立てたようだ。これは即ち、「一つの中国」を守り、「絶対に台湾の独立は認めません」と誓っているのと同じである。

「民主」の息吹を見殺しにしようとしているのに等しい。

トランプ大統領は今年の大統領選を勝ち抜くために米中貿易に関して一時的合意に踏み切っているものの、アメリカは中国のハイテクがアメリカを超えることを絶対に許さないので、米中覇権競争は激しくなりこそすれ弱まることはない。中国もハイテク国家戦略「中国製造2025」に関して絶対に手を緩めない。したがって台湾回帰の傾向は続く。

これは実は日本企業の発想の転換を摘み取り(すなわち視野を狭くさせ)、長い目で見れば、日本経済の発展の可能性をも摘み取っていくであろう危険性さえ秘めている。

日本はこうして世界を俯瞰する目の欠如のために、常に長期的外交戦略を間違えるのである。

1992年の天皇陛下訪中によって崩壊寸前の中国経済を救い中国のこんにちの繁栄をもたらしたように、今もまた短絡的な目先の利益を求めて習近平を国賓として迎え、必死で生き抜こうとしている台湾の「民主」にダメージを与え、中国がアメリカを超える手段に手を貸そうとしている。

安倍政権には目を覚ましてほしいと、ひたすら望むばかりだ。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(11月9日出版、毎日新聞出版 )『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

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