最新記事

中国

敗れたのは習近平──台湾総統・蔡英文圧勝

2020年1月15日(水)12時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

しかし、そのような規制を受けても、大陸に進出した台湾企業の台湾回帰の勢いを止めることはもう出来ない。

習近平が2019年1月に台湾にも「一国二制度」を適用すると宣言すると、蔡英文政権は直ちに「台湾回帰政策」を打ち出し、台湾での投資に必要となる土地や人材などの斡旋や低利融資などを断行し始めた。また半導体や電子機器製造において世界に冠たる大企業を多く持つ台湾は、台湾を「デジタル・アイランド」として「台湾とアメリカのシリコンバレー」をつなごうと、ハイテク面においても米台連携を強めている。

台湾企業は域外生産の4分の3をアメリカなどの第三国に販売しているため、米中貿易摩擦が盛んになればなるほど台湾回帰を加速させ、巨大なIT大国に再成長していく可能性を大きくしていく。

たとえば世界最大のハイテク製品受託生産企業で、日本のシャープを買収した鴻海(ホンハイ)精密工業(工場の一部移転)、水晶デバイスで世界トップを走る台湾晶技(TXC)、リニアガイドウェイなどで世界に名を馳せている上銀科技(ハイウィン・テクノロジーズ)、世界液晶パネルの雄である友達光電(AUオプトロニクス)や群創光電(イノラックス。フォックスコングループ)......などがその戦列に並んでいる。

人材には少々難点がある。中国大陸は長いこと世界の組み立て工場として多くの熟練工を育ててきたが、台湾が担ってきたのは頭脳と資金部分だ。台湾に回帰すれば、労働集約型の経済構造が要求する膨大な数の熟練工を必要とするが、しかし台湾全体をAIを強化したスマート・シティとして構築していくアイディアもあり、台湾企業の力を以て当たれば解決するにちがいない。

ここでもアメリカは台湾をAI大国としてバックアップしようとしている。

すべて北京(中国大陸)と対抗することが目的だ。

東アジアに「民主」の地殻変動

蔡英文政権の中枢には、かつて「ひまわり運動」で活躍した若者陣営も入っている。若さとエネルギーと確固たる理念が違う。北京を撥ねつける覚悟が出来ているのだ。

アメリカが北京政府に圧力をかければかけるほど、台湾巨大企業の台湾回帰の波は止まらず、若いエネルギーがそれを吸収していくだろう。

香港と違って台湾はまだ北京政府の構築の中には組み込まれていない。「独立した民主主義国家」を形成している。

香港デモにより思わぬ力を甦らせている台湾。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG

ワールド

米上院議員、イスラエルの国際法順守「疑問」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中