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敗れたのは習近平──台湾総統・蔡英文圧勝

2020年1月15日(水)12時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

2020年台湾総統選挙で蔡英文氏が再選 Tyrone Siu-REUTERS

台湾の総統選で、北京に抵抗する蔡英文現総統が圧勝した。敗れたのは親中派の国民党対立候補ではなく習近平国家主席だ。台湾の大手IT関連企業も大陸を撤退して台湾回帰し、東アジアの地殻変動を起こしている。

習近平の連敗!

習近平国家主席が香港政府に逃亡犯条例改正案などを提出させたために、香港デモが大規模化し、そのお陰で台湾民進党の蔡英文総統にはかつてない追い風が吹くこととなった。

台湾では1月11日、総統選挙が行われ、現職の与党・民進党の蔡英文総統が、台湾の選挙史上最多となる817万票を獲得して再選された。これまでにない圧勝だ。

同時に行われた議会選である立法院委員の選挙も民進党が過半数を維持した。台湾では地元に戻って投票することが要求されているので、世界中にいる台湾人が一斉に帰京する様は、まるで「民主に向かって民が集まった」ようで、圧巻だった。投票率はなんと、74.9%。ここまで「民主」が求められ、「民主」のために国民が一丸となって力を発揮した例も少ないだろう。

これは親中派の台湾野党・国民党候補者が敗れたのではなく、習近平が敗北したのだと結論付けていい。

つまり「自由と民主」が「中国共産党による一党独裁政権」に勝利したのだ。

チャイナ・マネーをどんなにばらまこうとも、台湾国民は「金ではなく尊厳を選んだ」のである。

このような輝かしい勝利があるだろうか。稀に見る快挙だ。

昨年11月27日付のコラム<香港民主派圧勝、北京惨敗、そして日本は?>に書いたように、11月24日に行われた香港の区議選でも民主派が圧勝した。

これも習近平の惨敗と言っていい。

あれから2ヵ月も経ってない内に、習近平は連敗をしたことになる。

米台の連携

さて、この快挙を成し遂げた台湾には、今後どのような国際情勢が待ち受けているだろうか。北京が台湾にさらなる厳しい措置を打ってくるだろうことは予想できるとしても、現状はそんなに単純なものではなく、日本にもストレートに影響してくると思われるので、以下に多少の分析を試みたい。

米台の連携に関しては今年1月9日付のコラム<台湾総統選「窮地に立つ習近平」に「温かな手」を差し伸べる安倍首相>で見たように、台湾の立法院(国会)は、昨年12月31日、北京から政治的影響が及ぶのを阻止する「反浸透法案」を可決した。 北京政府はアメリカや日本など、ほぼすべての国に対して、中国に有利なように思想を傾かせるためのプロパガンダに全力を投じているが、台湾はその最前線にあり、「反浸透法案」は北京による激しい政治工作(台湾の政治家への不法献金やメディア買収、ニセ情報流布など)に対抗するためのものだ。

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