最新記事

トランプ

イラン軍司令官を殺しておいて本当の理由を説明しようとしないトランプは反アメリカ的

The Trump Administration Is Barely Trying to Explain the Iran Strike

2020年1月7日(火)20時45分
ジョシュア・キーティング

時系列はやや曖昧だが、APの報道によれば、米政府はドローン攻撃を「法的に正当化」するため、「スレイマニがアメリカの外交官を攻撃する計画の最終調整のために中東に向かうという諜報を提出する」準備をしていた。だがその準備が整う前に、トランプはスレイマニ殺害を最終決定し命令を出してしまったという。

報道陣や議員からは、この諜報がどれぐらい確かなものだったのか、またその脅威がどれだけ差し迫ったものだったのかを疑問視する声が上がっている。マーク・ミリー統合参謀本部議長も、スレイマニが死んでも、問題の攻撃が「実行される可能性はまだある」と認めている。

今回のトランプ政権の説明は、誤った情報を根拠にイラク戦争開戦に踏み切ったジョージ・W・ブッシュ政権の嘘よりもひどい。イラク戦争に例えるなら、米軍がイラクに侵攻した「翌日」に、サダム・フセインが大量破壊兵器を開発していたと言い始めたようなものだ。

「悪党をひとり排除した」

いずれにせよ、トランプはスレイマニ殺害の翌日には「自衛」という見え透いたウソを翻し、「彼らが攻撃をしてきたから、我々は報復した」という広い意味の「報復」論とすり替えてツイートした。同時に、スレイマニがイラクで複数の米兵を殺したと非難するツイート(これは正しい)や、彼がベンガジの攻撃を指揮したとするツイート(これは誤り)をリツイートした。

もちろん、以前からアメリカがスレイマニを脅威と見なしてきたのは事実だ。だがブッシュもオバマも、そしてトランプ自身も、12月末までは、スレイマニは生かしておくより殺した場合のリスクの方が大きいと考えていた。

トランプの側近のスレイマニ殺害についての言い分は詰まるところ、ポンペオ国務長官が言うように「戦場から悪党をひとり排除した」というぐらい単純なのだろう。ある国務省関係者は非公開の会見で記者団に言ったという。「我々には自分たちの行動の理由を説明する義務などない」

問題は、今回のように軍事的な緊張が高まっているなかでは、攻撃の動機が誤って解釈される事態も避けられないということだ。もしも今回のドローン攻撃が本当に自衛のために行われたのなら、トランプ政権はその証拠を提示しなければならない。もしもトランプが何であれスレイマニ殺害を正当なものと確信しているなら、その根拠を示すべきだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

実質消費支出11月は予想外の2.9%増、食料品や自

ワールド

ローマ教皇が初の枢機卿会議を開催、教会の分裂回避な

ワールド

加とブラジルの首脳、ベネズエラ主導の移行プロセス支

ビジネス

経団連、赤沢経産相と懇談 経済安保で官民連携求める
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 7
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 8
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 9
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 10
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 8
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 9
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中