最新記事

米軍事

イラン革命防衛隊の司令官殺害 トランプの攻撃指令に法的根拠はあったのか?

2020年1月5日(日)10時32分

国際法のこれまでの基準からみて、脅威にみあった対応を必要に迫られて行う場合、国家は先制的な防衛が可能だ。

司法管轄外の処刑に関する国連特別報告者のアグネス・カラマード氏は、攻撃がこの基準を満たしているかどうか疑問を示す。ソレイマニ司令官を標的にしたことは「差し迫った自衛のため事前対応というより、過去の行為に対する報復のように見える」と指摘。「このような殺害への法的根拠は非常に狭く、適用するのは想像しがたい」と述べた。

米民主党議員はトランプ大統領に対し、ソレイマニ司令官による差し迫った脅威について詳細を提供するよう求めた。

上院情報特別委員会の副委員長である民主党のマーク・ウォーナー議員はロイターに対し、「脅威があったと信じているが、どれだけ差し迫っているかという点は答えがほしい」と述べた。

米国内法からみたトランプ大統領による司令官殺害の権限と、議会に事前に通知せずに行動すべきだったかどうかについても疑問が示されている。

法律の専門家は、最近の米大統領は民主・共和問わず、標的の殺害を含む一方的な武力行使の可能性を拡大解釈しており、歴代政権内の法律専門家により支持されてきたと指摘する。

今回の場合の自衛論の論拠は、米国人を攻撃するという差し迫った計画に関する具体的な情報を政府が公表することにかかっているといえる。

前出のチェズニー氏は、自衛の場合、議会への事前通告や議会の事前承認を得ることなく、行動が可能と指摘する。

民主党議員は、ソレイマニ司令官擁護の声はあがっていないものの、今後議会と協議するようトランプ大統領に求めた。

米中央情報局(CIA)でイランが支援するイラクでの民兵組織を分析していた元アナリスト、エリッサ・スロットキン下院議員は、「トランプ政権も他の政権と同様、自衛のために行動する権利を有している。しかし政府は直ちに議会と協議する必要がある」と述べた。

[ニューヨーク ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



2019123120200107issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、イラン・イスラエル仲介用意 ウラン保管も=

ワールド

イラン核施設、新たな被害なし IAEA事務局長が報

ビジネス

インド貿易赤字、5月は縮小 輸入が減少

ワールド

イラン、NPT脱退法案を国会で準備中 決定はまだ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中