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45人殺傷「津久井やまゆり園」植松被告が示す大量殺人犯の共通点

2020年1月8日(水)06時00分
青沼 陽一郎(作家・ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

造田死刑囚は事件と前後して、友人に向けた手紙の中でこう書いている。

〈造田博教を作りました。造作博教に入りたい気持ちのある人は、造田博教に入れます。造田博教はどこでも宣教します。宇宙に出ても宣教します。どこでも宣教します。〉

私(つまり筆者)はこの「造田博教」について教えてほしいと彼に手紙を書いた。その詳細については拙著『池袋通り魔との往復書簡』に譲るが、彼は死刑が求刑されたあとの筆者宛への手紙の中でこう書いている。

〈私は求刑で死刑になりましたけど、今の日本や世界の社会の状況で私が死刑なんてないと思います。検察官が平気で私に死刑の求刑だすのだったらキリスト教徒の人達や他の人にも同じように刑を出すし、外国政府もキリスト教徒の人達も他の人もみんなカンカンになっていると思います。〉

不幸を作ることしかできなかった自らを自覚してほしい

植松被告は退職後の措置入院中、担当医に「ヒトラーの思想が降りてきた」と語っていたという。いわば優生思想だ。

これが過激イスラム思想となれば、テロにも繋がる。それどころか、植松被告の手紙からすれば、もはや日本を救うような革命家を気取っている。

植松被告の弁護側は薬物性精神障害による心神喪失を主張するが、そもそも、事前に結束バンドと刃物を準備し、裏口からハンマーでガラスを割って侵入しているのだ。心神喪失の人間にそんな計画的なことはできない。

同被告は衆議院議長に宛てた手紙の中で、「障害者は不幸を作ることしかできません」と語っているが、今回の事件で不幸を作ることしかできなかったのは、ほかならない自分自身であること、それは強い者が弱い者をいじめる卑怯な行いであること、そのことが十分に自覚できる機会があってほしいと切に願う。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
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