最新記事

日本経済

20年前、なぜ日本は「黒船CEO」ゴーンを求めたのか

Black Ship CEOs

2020年1月29日(水)18時50分
千葉香代子、大橋希、井口景子(東京)、李炳宗(ソウル)、クリストファー・スラビック(ロンドン)

韓国や日本の企業がおかれた現状を考えれば、心地よい伝統が失われるのも仕方ないかもしれない。自国でしか通用しないルールに従っていては、国境を超えた市場争奪戦を勝ち抜けないからだ。

日本では99年、イギリスのケーブル・アンド・ワイヤレス(C&W)がNTTとの買収合戦の末、国際デジタル通信(IDC)を手に入れた。国際通信に進出するNTTにIDCが協力することは郵政省も認めた既定路線とみなされていたが、C&Wが資本の論理でIDCを奪い取ったのだ。
 
新生IDCはC&W出身のサイモン・カニンガム社長の下、高付加価値企業に変身するための大胆な事業再編に着手。今年3月期には法人顧客の比率が80%に上昇し、売り上げに占めるデータ通信の割合も99年の15%から50%に増えた。

IDCの社員は、社長を「サイモン」または「サイモンさん」と呼ぶ。社長が日本語で社員に声をかけることも多いという。「(事業再編に成功したのは)社長自ら社員とのコミュニケーションを密にして、ビジョンを知らしめた結果だ」と、マーケティング担当役員の三木眞弘は言う。

宮崎県のリゾート施設シーガイアを運営するフェニックスリゾートのマイケル・グレニー社長は、買収される以前の同社の帳簿を見て「収支が一致していないことに驚いた」という。「来客数を増やすことに夢中で、利益を上げようという姿勢はあまりなかった」

深刻な日本の経営者不足

日本企業の経営は、日本人に任せるのが望ましいと考える外国企業や買収ファンドも多い。だが外国人社長には、アウトサイダーゆえの利点もある。

「海外では、業績が思わしくないと株主が社外から経営者を招くケースも少なくない」と、経営コンサルティング会社ベイン&カンパニー(東京)のマイケル・ガースカは言う。「社外から来た経営者は会社のことをよくわかっていないので、リスクは伴う。だがアウトサイダーには、戦略実行の過程で既成概念や制約にとらわれない発想を持ち込める強みがある」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、最高値更新 高市首相誕生

ワールド

ボリビア新大統領、IMFへの支援要請不可欠=市場関

ワールド

米豪首脳がレアアース協定に署名、日本関連含む 潜水

ワールド

カナダ、米中からの鉄鋼・アルミ一部輸入品への関税を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 9
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 10
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中