最新記事

事件

ゴーン被告レバノンへ「日本の司法制度の人質にならない」 東京地検、裁判所に保釈取消を請求

2019年12月31日(火)22時15分

仏レゼコー紙は保釈中のカルロス・ゴーン被告が日本を出国し、国籍のあるレバノンに到着したと報じた。REUTERS

会社法違反(特別背任)などで起訴され保釈中の日産自動車<7201.T>前会長カルロス・ゴーン被告が31日、声明を発表し、レバノンにいることを確認した。「不正に操作された」日本の司法制度の「人質」にはならないと表明した。

ゴーン被告は声明で「私は今レバノンにいる。有罪が前提で、差別がまん延し、基本的人権が認められない、不正に操作された日本の司法制度の人質にはもうならない」と語った。

また「私は不正と政治的迫害から逃れたのであって、正義から逃れたのではない。ようやくメディアと自由にコミュニケーションが取れるようになった」などと述べた。

ゴーン被告はフランス、ブラジル、レバノンの国籍を有している。どのようにして日本を出国できたのかは不明。被告は保釈の際、海外渡航禁止などが条件となっており、保釈中は当局の厳しい監視下にあったほか、パスポートは弁護士に預けていた。

NHKによると、出入国在留管理庁にはゴーン被告が出国した記録はない。NHKはまた、レバノンの治安当局者の話として、ゴーン被告に似た人物が別名で、プライベートジェット機でベイルートの国際空港に到着したと報じた。

ゴーン被告の弁護を担当する弘中惇一郎弁護士は、NHKが中継した記者団の取材で、被告のパスポート3冊は弁護団が現在も保管していると述べた。また、ゴーン被告の出国は31日朝のニュースで初めて知り、非常に驚いているとコメントした。

日本の法務省によると、レバノンは日本と犯罪者引渡条約を結んでおらず、ゴーン被告の身柄が日本に引き渡される可能性は低い。

フランスのパニエ・リュナシェ経済副大臣は仏ラジオ局に対し、ゴーン被告が日本を出てレバノン入りしたというニュースに「非常に驚いている」と述べ、メディアを通じて知ったと明らかにした。また、法を超越する者はいないが、フランス国民としてゴーン被告は領事支援を受けられるとした。

日産の広報担当者はコメントを控えた。在日レバノン大使館は「何の情報も得ていなかった」とした。ブラジル大使館からのコメントは得られていない。

英紙フィナンシャル・タイムズは30日、ゴーン被告は外出を禁じられていなかったとし、被告の側近の情報として、 29日夜にベイルートのラフィク・ハリリ国際空港に到着したと伝えた。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、複数の関係筋の話として、ゴーン被告が日本を出国し、トルコ経由でレバノンに30日到着したと報じた。被告は公正な裁判を受けられないと確信し「業界や政治の人質として捕らわれることに嫌気が差した」とのある関係者の話を紹介した。ゴーン被告は数日中にレバノンで会見を開く予定という。

ある関係筋は、ロイターに対し「(ゴーン被告は)裁判で検察と戦うのをあきらめたのだと思う」と語った。

国内メディアは31日夜、ゴーン被告が許可を得ずに海外に渡航したとして、東京地検が同被告の保釈の取り消しを裁判所に請求したと報じた。NHKによると、東京地裁が請求を認めれば、保釈は取り消され、今後、保釈金15億円は没収される見通し。

*保釈の取り消し請求に関する情報を追加しました。

[パリ 30日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



2019123120200107issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

チェコ、来月3日に連立合意署名へ ポピュリスト政党

ワールド

日中、高市首相と習国家主席の会談を31日開催で調整

ビジネス

トランプ氏「ガザ停戦脅かされず」、イスラエルは空爆

ワールド

エベレスト一帯で大雪、ネパール・チベット両側で観光
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 3
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 6
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 7
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上─…
  • 10
    怒れるトランプが息の根を止めようとしている、プー…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 10
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中